目が見えない | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 僕は目が見えない



 手触りで見たつもりになっている

 もしかするとこのまま

 死ぬまで見えないのかもしれない



 いいのだ

 どうせ見えたって

 本当のことは見えはしない



 それでも色を見てみたい

 形はわかるけど色は分からない

 世界は真っ暗だ

 このまま死ぬまで見えなかったら

 夕日の赤も草の緑も

 雪の白

 空の蒼

 死ぬまで見えなかったら



 そこで目を閉じて寝ていた自分に気がついた

 目を開ければ

 色があるんだと

 その当たり前のことが怖くなり

 僕は目を開けられないままに強ばっていた



 そんなもんさ

 人生は

 見えないことを恐れて目が開けられない

 そんなもの



 本当は見える奴ほど臆病だ







                  目が見えない
                  奇妙な言い方だ
                  鏡なしに自分の目が見える奴がいたら宇宙人