花の蔭 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある



 花の蔭にいた蜂に気づかずに
 うっかり花に手を触れて
 その意外な痛みに戸惑った

 小さかった僕はそれで一日半も死にそうに寝ていたが
 払い除けた蜂も針を失って死んだ
 お前を刺した蜂が死んでいたよと
 誰かがそれを小皿に乗せて枕元に置いていった

 忘れもしない
 死を死ぬほどに悼んだ日
 なぜ僕だけが生き延びたのかと

 それ以来
 僕は今でも花の蔭を気遣って
 花を愛している






                      「載せて」ではなかったと思うのです