海景・漁(すなど)る者たち | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある



















































  遅い午後

  人の営みを見たくなって小雨の海べりを歩いた

  おびただしい数の漁船とクルーザーの写真を何十枚も撮り

  干された漁網とブイを避けながら歩いた

  雨が強まっては弱まり

  風力発電のプロペラを風に代わって回していた

  止まったような時間の中で漁る者たちはゆっくりと動き

  行き交う船の作り出す波が浮きを揺らしていた

  音もなく方向を変える飛行機の下の防波堤には

  鴎たちが何十羽も羽を濡らしたまま黙って整列し

  釣り人や採集者を眺めていた

  

  蜻蛉(とんぼ)翔べ翔べ

  もうすぐ日が落ちる

  僕の海辺に日が落ちる



  歌ってはみたけれど

  僕は網も竿も船さえも持っていなかった