雨 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある








 豪雨になっているらしい
 濁流になる雨の姿を夢に見た


 空が壊れたみたいに雨が降り
 ノアの大洪水の日がまたやってくるのか


 けれど僕のフロント・ガラスに降る雨は
 なんだか奇妙にしおらしく


 僕の僕たちの進行が速いせいなのか
 ワイパーに押しやられる前に吹き飛んだ

 
 その静かな透明板の上の滑走は
 肌に触れる指のように緩慢に見えたのだ



 束の間の逢瀬を楽しむかのように
 夢の奥でまた雨脚が速くなった


 ノアの洪水の幻想と指先のように伝う雨

 あまりにも掛け離れた遠い時間