憂い | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある






  

  風が吹いて私の服の中に入り込む
  その風があなたであることを
  私も風になってあなたの身体を包み
  あなたの一部になることを

  風の中であなたが薫り私が匂う

  あなたが私を映す鏡になる日には
  私もあなたを映す鏡になって
  幾重にもあなたを映し私を映し
  幾人ものあなたと私が
  鏡の中でひとつになると

  そうあなたは歌い願いもしたが


  野花を摘んで髪飾り
  小さな翡翠の首飾り
  微かな化粧の色さえも

  この日には
  あなたの憂いを消すことはなく
  鏡に風は映らなかった