少しだけ苦く笑って | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 Robin Williams が死んだ

 大好きなとても大好きな俳優だった

 涙は出なかったけれどすごく残念で悲しい


 スタンダップ・コメディアンが人を心底感動させてしまうようになった

 いやスタンダップ・コメディアンだったからこそ

 苦い笑いが人の心を打ったのだ


 なんでこんなところに出てくるの

 そう聞きたくなるような役どころでさえいつも光っていた

 彼の役どころだけでなく

 その苦笑いの演技に随分と僕は慰められ励まされた

 一つの映画を30回以上見たこともある


 彼が悩んでいたとか弱かったとか

 そんな話はどうでもいい

 仮にそうだとしてもそれはこの世の中が悪いのだ

 もとから彼はある意味で

 妥協するこの世の中に逆らう人の姿を演じ続けた

 英雄としてなんかではなく少し気弱そうに

 でも無防備なほど確乎として


 だから苦い笑いこそ彼の鋭利な武器だったのだ


 アルコール依存症だったという

 世の中が嫌でアルコールに逃げたのだとは思えない

 きっと酒が好きだったのだ

 ならば死も苦笑いの一つなのかもしれない

 あの世に行ったら死ぬほど飲んで戻ってくるか


 オーケイ

 例のごとく「ああそうね」というような顔をして

 指を立てて笑いながら逝ったのだと

 僕は信じることにする



 どうしようもなく残念な思いを

 少しだけ苦く笑って

 あなたの決断に乾杯するよ


 Cheers, my Robin!