すれちがう言葉の | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある



 懊悩の千の言葉を凝縮し

 おずおずと一つの言葉をあなたは口にする

 数多ある擦り切れた言葉の中のたった一つとして私はそれを聞く



 懊悩の千の言葉を凝縮し

 おずおずと一つの言葉を口にするあなたと

 数多ある擦り切れた言葉の中のたった一つとして聞く私



 話す言葉と聞く言葉

 同じ一つの言葉なのに

 同じでないあなたと私



 いつもの路で

 いつものように気づかぬままに

 すれちがう



 終わることない千と一つの物語