花曼荼羅 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある




 冷たき風のふと戻り来る

 皐月の空の夕べ前

 水巡る川面の端(はた)を堰き止めて

 子らの遊ぶや色とりどりの花

 素直なる若草と円座のごとく浮かべたる

 人影もなく静まりてあれば

 我は靴を脱ぎ川に入りて土塊(つちくれ)をどけ

 いと疾き流れにこの花曼荼羅を流したり


 月まえに花の翳りやただ一夜