瓔珞(ようらく)の風 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある



 開け放したる火頭窓を抜け
 五月薫風のつと入り込めば

 御仏の胸に掛かりし瓔珞を
 微かに揺らして過ぎにけり

 ただ熱からざるやその胸の
 覚者なるとも人にしあれば

 断つ如く離れゆく矢の音に
 しばし我を忘れし禅堂の床

 若ければ竹の如く信じたる
 道いまだ忘れざる身は悲し