五月の時計 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 五月になると動き出す

 銀の鎖のその時計

 もう誰も巻く人のない

 緑の林の小さな池に

 大切にしていた少女の手から

 するりと落ちて沈んでいったその時計

 その子のいのちを思い出しでもするように

 五月になると動き出し

 その日に止まるその時計

 池の底の泉の水の

 湧き出る流れに

 愛された