静かに出て行く | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある



 私のよく見る夢
 誰にも知られずに部屋から出て行く

 談笑する仲間たちと相容れないのではない
 私も輪の中の
 それもどちらかというと中心近くに

 なのに気が付くと
 ドアの傍の薄暗がりにいる
 皆が楽しそうにしているのを喜んでさえいる

 でも出て行くのだ
 誰にも言わず
 するりと手から何か大切な物を取り落とすみたいに

 外に出ると満点の星
 天穹に散りばめられた数多の宝石
 とりかこむ
 宇宙(そら)は深い井戸だ

 だが
 どちらが価値があるというわけではない

 人と比べようもないものの傍にいることを
 いつのまにか選んでいる

 夢だから
 理由は知らないし
 あるはずもない

 人が海だということを知って
 そうするのでもない