焔の船 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 陸(おか)の上の押し寄せる風の大波に森は
 力ない積み木の群れのように押し倒された
 川は溢れかえり街々は散り散りになる
 水のない緑の洪水が陸を埋め尽くしていく
 吹き飛ばされてまるで砂丘の砂のように消える花

 頭上高く高く
 焔の船の目眩(めくるめ)く輝きと熱
 猛々しい叫び
 青かった空が黒く見えるほどに轟轟と

 焼き滅ぼしていく
 この世の曖昧なもののすべてを容赦ない勢いで
 何人も何物も乗せることのない空虚な方舟よ

 服を融かし肌を焦がし骨を焼け
 その高みに向かって我がすべてを