水の月 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある



 水に映る月の裸身に憧れて

 夜ひとり池の面を眺めやる

 冷たき素肌を水に浮かべる君の

 せめて象(かたど)りの水の月

 濡れて光れば月よりも美しく

 思わず掬いとろうと延ばす手に

 水は揺れ影は揺れ光砕けて君は無く

 腕を垂れ見はるかす池の面に

 また君の笑みいるを見ることの

 いたき悲しみを僕は今日も笑う


 映らなければ象らざれば

 貴(とうと)きものをと