街角ひとり歌 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 走って行っても追いつかない
 歩いて行っても届かない
 道行く風は素早すぎ
 昨夜(ゆうべ)の君は虚(うつ)ろ顔

 今宵の私
 後ろ髪
 似合いの歌はひとり歌
 空を飛んでも見つからない
 泳いで行くには力ない
 消えそうな色の街の灯で
 照らして覚えた歌詞(うたことば)

 ヘッドライトに目を伏せて
 爪弾く歌はひとり歌
 一言言えばよかったと
 二言言えば言いすぎて
 ちょうど良い音見つからない
 楽譜の端に書き付けた
 一回だけのリフレイン

 数えて歌ったひとり歌
 走って来たのはこの恋の
 歩いてきたのはこの道の
 交差点のない時間軸
 あっと言う間に恋尽きた

 束の間の夜
 燃え明けて
 後朝(きぬぎぬ)の歌はひとり歌