時の鏡 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 鏡に明日(あした)を映したら
 見えるのは昨日(きのう)だろうか
 それとも明日を夢見るあなただろうか

 鏡に昨日を(きのう)を映したら
 見えるのは明日
 それとも昨日を振り返るあなただろうか

 時の階段昇るあなたを映したら
 あなたは鏡の中の階段を降りてきて
 あなたが「さよなら」を言った人を映したら
 あなたに「初めまして」と 
 鏡の中のそのひとが言うだろう

 明日の見える鏡があったらいいと思うだろうか
 未来が見えるのが幸せかどうかは別にして
 明日の見える鏡には
 いったい何を映せばいいのだろう

 今の僕の悲しみを映した鏡に
 幸せなあなたの明日が見えるなら
 僕は今日の悲しみをそのままにして
 時の鏡を見るだろう

 でも
 鏡には未来を映す力はなくて
 今の自分を確かめたくて見るときも
 光が行って帰る時間だけ昔の自分が見えるのさ