夕べに有るか無きかの風が吹く
世界の音が消え
はるか彼方まで静まり返る大気の中を
形の無い彫像の夜がやってくる
時は何か
地はどこまで広がるか
海は誰の声を聞いているのか
軋む大気
色を失ってゆく空
形を隠してしまう海
その向こうに一筋の稲妻
この静けさの中に落ちてくる光の竜
唸ることもせず
時の裂け目のようにまっすぐに
海に突き刺さった
あれは何の印章か
来たるべき夏の一番騎
無音の旗に染めつけた伝令の知らせ
夜の重い腕(かいな)が町の木々を抱く
静かに
静かに待てと
竜の咆哮が
我らの胸の奥底に
耳には聞こえない大音響として届く午後九時を