夜の浜辺で貝を拾った
15センチはありそうな
きざきざに波打つ外側と
月の光に虹色に揺らめく内側の
たくましそうな二枚貝の
片割れの
この貝で船を作ろう
黄色い野菊の帆を立てて
風に頼む必要はない
遠い航海の望みのままに
船はまっしぐらに行くだろう
眠れる海の真ん中へ
うらうらと光が船を漂わせ
飛行機ほどもある飛魚が
僕らの頭の上を飛んでいく
自分の故郷の海に居て
貝殻の船はたじろがず
悠々と潮風の中を揺れるだろう
君は魚になればいい
青白い鱗を光らせて
波をくぐり風に歌って
時間の消えた海原を
僕は根の切れた海草になり
水に浮かんで君を待つ
泳ぎ疲れた君の海の褥となって
君を抱きしめる
貝の船は知るだろう
生きている者たちが
泳いでは休み少し流されて
また息を吹き返したように
泳ぎ出すのを
生きてある者が
止まったままの時間の海に
すべての哲学を廃絶し
何も考えずにあることを
身体のすべてを海に与えて
愛の形にすることを
夜の海が
昼の海になる夢を見る間