言葉は | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 もう言葉は使い古されてしまったのだ
 みんなが
 テレビの垂れ流しのおしゃべり番組や
 決まり文句で塗り固められたニュース・ショーの言葉しか
 使わなくなったから

 悲しいことに
 そういう言葉を使っている人には
 どれが自分の言葉だか
 もうわからない
 自分の生きた血の刻印が押されていない言葉ですら
 なんだか自分の言葉に思えてしまう

 テレビはもうどうしようもない
 みんなの平均値
 それでいてみんながちょっと食いつく言葉を
 組み合わせているだけで
 語る人の言葉など誰も考えもしない
 だって
 どれがその人らしい言葉なのかが
 誰にもわからないから

 今このときを
 伝えようと喉を嗄らして叫ぶような
 血反吐を吐く言葉は
 敬遠される言葉になったのだ

 適当にわかりやすく
 それほどに心をえぐることもない
 それでいて何だか感動したような気になれる
 そんな新聞のチラシ広告みたいな言葉だけが
 受け入れられるのだ

 だから
 もう言葉は使い古されてしまったのだ
 そして
 言葉が使い古されたということは
 言葉を使う人の人生も
 真新しいはずの人生も
 誰かが使い古した人生になる

 コピーのコピーのまたコピー
 どこかで聞いた言葉を何の脈絡もないままに
 並べて言葉を話した気分になるなんて

 そう
 この僕の
 この言葉だって同じこと
 使い古され
 磨り減って
 なのに愛着の一つも感じられないようになる

 そんな
 コピー人生を
 幸せな自分らしい人生だと
 思える人はとても幸せ
 それとも
 限りなく不幸せ

 いいやどっちでもありゃしない
 そんなことを
 そんな大切な事柄を
 軽く言葉にして
 わかったような気になるほうが変なのだ

 誰にもわからない人生を
 でもそれゆえに自分だけの人生を
 生きることを
 今始めよう