原発ゼロの夜 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 稼働している原発がゼロになる夜
 僕たち人間を超えている反応が
 僕たちの不服の声で停められる

 僕たちは
 僕たち人間の力を超えた便利さと
 命を危うくする危険とを
 天秤にかける


 でも便利だからと言って
 僕たちは
 切れかかっている吊り橋を渡るだろうか
 便利だからと言って
 爆弾を積んだロケットに乗って
 隣町まで出かけるだろうか

 
 そうだ
 差し引き勘定が辻褄が合わないものになるとき
 言葉で言う安全など意味がない
 ただ繰り返される油絵の具の
 分析作業が残っている

 それで描いた形や色が
 人間の決めた小さなルールに
 従うと本気で人は思っているのだろうか

 僕らがしていいことは
 僕らが自分たちの力でできることだけだ
 できないことを
 できると言ったときに
 僕らの終わりの始まりがある