長いことご無沙汰していた知り合いの
僕のというよりオヤジのだけど
僕も小さいとき時々遊びにきた
その人の家にいる
水平線が見える
海も少し碧い
風は強いが
広い芝生の庭の陶器の椅子に座っていると
日差しが春めいて
重そうなテーブルに頬杖をついて
ぼんやりする
ダフネはめずらしくじっとしている
黒い長めのワンピースの膝を抱えて
芝生に座り込んで海を見ている
きっと微かに残る思い出を
たどり始めたに違いない
この海は地中海のようには碧くもなく
煌めいてもいないだろう
だが海だ
考えれば気が遠くなりそうに遠くても
この海はダフネの故郷の海に
彼女が泳いだろう海に
つながっている
隔てているのは時間
僕はダフネを見たり
海を眺めたりしている
この庭の主は
さっきまでひとしきり
オヤジの思い出を語り
それから海を見たまま立ち上がって
家の中に戻って行った
「あの子は君に似ているね」とだけ言って
週末はここに居させてもらう
週が明ければ
ダフネを送り出そう
時間が取り返しのつかない遠くまで
進む前に
まだ早い春のうちに