川底の月 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 濁りひとつなき

 清らかな水

 やがて深まれる川の

 水底(みなそこ)に

 月隠れて眠り居り

 昼は日の光に恥じらいて

 淡い砂の帳に隠れ

 夜

 水底より

 川筋の草々をくぐる

 青き光を送りけり


 あるときは欠け

 あるときは満ち

 川の流れに

 相和せり


 春の日は

 ともに水底に沈める

 オフィーリア

 夏の日は

 鮎たちの群れ


 ひとりなる月は

 ひとりにならず

 川の仲間に

 相和せり


 とき

 遥か