あの空へ翼広げて飛べるのは鳥たち
だから
たくさんの歌が詩が自由と翼を結びつけ
自由はあたかも空翔ることのようになり
でも糸の切れた凧は自由だろうか
たしかに大空を舞い飛んでいくけれど
自分で行き先を決められないのでは
つまり自由とは自分の思うままになる翼によって
自分の思うところへ行くことなのか
毎日が決められたように進んで行く
組織が新しい滅茶苦茶を受け入れなくなり
固定した発想が自分の脳髄まで沁み込んで
外側にも内側にも窮屈で息苦しいと思うとき
君は自由な翼の鳥になりたいと思うだろうか
空翔ることが自由なら
日の光が苦手なわけでもあるまいに
土の中に追い込められて目も見えず
一日に自分の体重ほども食べる必要に迫られて
あくせくと土中に暗いトンネル掘りつづけ
土を育てるミミズをむしゃむしゃと食べ
ついでに麦や野菜の根を切り刻んでは
害獣の烙印押されたモグラたちは
不自由この上ない地下牢の
囚われびとのようだけど
トンネルに誰の彼のの所有権があるわけもなく
仮にあってもほとんど留守で
地上の塀で人は立ち止まるのに
地下ではモグラがやすやすと境界線を越えていく
交差点で車に轢かれることもなく
赤信号で長く待たされることもない
ましてや
やっていいこととわるいことなんて
あらかじめもうほとんど決まっているようで
ああだこうだと長い論議に疲れ果てる必要もない
食うために生きるシンプル・ライフの生き様は
もしかしたら僕らよりずっと自由な生き方で
窒息しそうな毎日に息つまり代償みたいに
ネットで自由を愉しむ僕たち人間に比べたら
モグラのほうがよっぽど自由なのかもしれないと
そう思った途端にやり切れなさに包まれて
ええいそれなら自分もモグラになったらどうかと
シャベルで土を掘り出してみてすぐに気づいた
僕ら人間はモグラのパワー・ショベルのような手も
ホシバナモグラの超触覚センサーもなく
僕ら人間が
土の中のモグラのように
自由気ままに生きることはできないと
僕らは鳥になれなくて
モグラにさえもなれなくて
世界でいちばん不自由な生き物に成り果てたのか
でもそうだとしたら
それはなぜ
僕らが作ってきたこの光の社会が
暗闇の猛獣から僕らを自由にし
ミミズ取り合う
その日暮らしのモグラのような生活から
僕らを自由にしてくれた
はずだった
それなのになぜ
今僕らは不自由を感じて息をひそめて暮らすのか
それは多分僕らが
硬いコンクリートで乗り越えられない塀を建て
鋼鉄の鎖で僕ら自身を縛ったからだ
便利と安楽に食べて行けることと引き換えに
ほんとうに合理的かどうかもわからぬ
合理主義とかいう複雑怪奇で
何重にも僕らを取り巻いて動けなくする代物に
僕らの自由を売り渡してしまったからではなかったか
と
さっき通りかかった畑の端で
春と勘違いしたのか
ひょこりと穴からのぞいたモグラの
ちょっと寝不足のとぼけた顔を見て
僕は長い哲学的考察を
したものだ