雨上がりの道 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 吸う空気が
 冷たく湿って快い
 鼻腔に満ちる雨の残り香

 雨よ
 僕の愛
 降りやんでも僕を離れるな
 ずっと
 ずっと
 僕にからみつけ
 顔に
 胸に
 手や足に

 素肌に
 雨をまとって
 歩きながら見上げた
 まだ灰色の空を
 見えない鳥の群れが往く
 遠い大陸を
 目指すのか
 いのちの限りに
 憧れて

 空に
 遥かなアリア
 歩道に8分の6のジーグを
 憧れて憧れて
 踊りだす

 風のようなイーリアン・パイプを
 小人が吹くティン・ホイッスル
 流れ者のフィドルと
 折り重なる歌声よ

 どこまでも
 どこまでも
 踊りつづける

 ケルトの空もこんなだろうか

 ゲールの鼻にかかった
 複雑な発音で
 耳もとで
 歌いつづけて

 雨よ
 慈しむ
 僕の愛
 どこまでも
 この道を濡らせ

 お前と
 別れる日の来ぬように