風のフルート | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


風が巻いていた
でも
木枯らしには思えなかった

もしかすると
それは春のさきがけ

久しぶりに
コンクリートの底で
フルートを吹く

風の子であることを
忘れないために

一所に定着することなく
吹いて行く者であることを
忘れないために

どこかから
入り込んだ風が
季節の境目で
僕に行けと言う

お前は
誰あろう俺たちの
仲間ではなかったか

お前が吹くのではない
笛は
風が鳴らすのだ

お前はただその尖兵
それがなぜ
こんな
風を防いだ場所にいるのかと

戻るがいい
何もかも捨てて

ともに吹きすさぼうと
お前を待つ者がいる

風の王国へ