ツバメ | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 うって変わって
 ほの温かい冬の雨の
 降りしきる

 校舎のアーケードに
 群れ棲んでいた越冬ツバメが
 腹がすいたのか
 はたりと巣から落ち

 濡れたコンクリートに
 打ちつけられそうになる

 瞬間に
 ツバメ返しした

 逆さまの放物線で

 そのまま
 燕尾服の尾が
 十二階のビルの上まで
 飛び上がる

 ティン・ホイッスルの聞こえてきそうな
 いちめん灰色の空

 もう
 巣を捨てたのか
 そのまま帰らない

 鴻鵠の志を知らぬ燕雀の

 遠い飛翔

 きっと焦がれて

 すべてを失くした
 幸福の王子のそばへ
 帰るのだ


 ツバメになりたい
 あの空で