人にやさしくする気持ちが
愛情とか友情あるいは恋とどこが違うのか
オレには はっきりとはわからないが
やさしくすることは
絆を持つこととは
どこか違っている
恋はもちろん
家族との愛情であれ
友情であったとしても
やはりどこかで
相手を求めてる
でも
やさしくすることは
何かを
あるいは
誰かを
求めることはないのじゃないかと
それも広い意味では愛なのかもしれないが
床に座ったり転がっていることが多いオレの
床置きの円形のテーブルの上に
所狭しと広げられたターキーや
フライド・チキン
量指向のイタリア料理店みたいな
多量のサラダ
クラッカーにのせるためのイクラや
チーズ
生ハムとゆで卵にキャビアもどき
もう言い立てられないほどのものを
選んで買ってきたのは
誰のやさしさだったのか
「なあに このカシマシイ二人の
後を黙ってカートを押してきただけだよ」とT
「ケーキもある」と自慢げにS
ワインのボトルをまず二本
テーブルに置いてから
「そうそう これがなくちゃダメよね」と
四角いガラス容器に収まった
キャンドルを五つも並べてから
一つずつ火を着けて満足げなM
それから小さなヒイラギのリースと
何かの枝と葉の飾りを窓際の
カーテンレールの上にひっ掛ける
「こんな金があったら」と言いかけた
オレの口をさっと押さえて「お黙り」とM
Tがニヤニヤしながら
「大半はMがカラダ張って稼いできたんだと」
「そうそう 港のヌード喫茶でアルバイトしてきた」と
アルコール一滴も飲まないうちから
嘘丸見えのシモネータになるMが
待ち切れなさそうに
「さあ明かりを消して」と宣言し
瞬く間に押しかけパーティが出来上がる
ほんとうにコイツら今夜はオレのところを
占拠するつもりなのだと
なんだかんだと久しぶりの四方山話
「で俺とKとはけっこう長いつきあいだろ
それからSとMは口先女グループで
で俺がSと一緒に来たってことは
K お前とMとがセットなわけだが
まあ そのうちKとこいつが仲良くなって
俺とMがシッポリと」と
調子に乗ったTが言いかけると
両脇からゲンコツが飛びかかる
「ねぇ」とS
「MったらK君のキッチンのどこに何があるか
知ってるみたいにさっさと手際よくって
どこまで行ったの おふたりさん?」と
いいか M
ウッカリしたことを
言うんじゃないぞと思う先から
「ああ 私ね
明日からここに住むことになったのよ」
と言い出したM
オレがまじめな顔でにらむと
「へぇ けっこうマジみたいね」とSが乗り出してきて
「ねぇM あんたって
前はK君のこと嫌いじゃなかったっけ」と
どうやらこの尋問はMには刺さる質問で
オレにはもっと突き刺さる質問だったのだが
そんなことはお構いなしにMがこう言ったとき
オレはもう少しで頭がアルコール漬けに
なりそうなほど頭に血が昇る
「そりゃそうよ
だってKちゃんは私のオヤジを
盗っちゃったんだもの」
カッとなってかオレは「おい M」と
言ったけど先が続かず黙りこむ
「なんだかビミョーな話ね」とシタリ顔のS
オレとM両方をそれぞれ少しは知ってる連中なら
J 先生がワダカマリの原因なのかと
うっすら気づいていたかもしれないが
それをこうあからさまに言われると
やはり他人行儀といういやつか
Tなんかは急に黙りこむ
「では質問 Mさん
じゃあどんなキッカケで
Kさんと親しくなったのかしら」とS
Sという情報通はおしゃべりなときは
とてつもなくおしゃべりだが
Mが親しくするだけあっておバカではないらしい
「ああ それはMが酔っ払ってKが送らされた
ヨル辺りから何かがちょいと変わったんだよな」とT
それは少しは当たってた
「ふうん」とまだ合点がいかないふうのS
「ところでK君 君ってたしか
あのヒョロっとした」と 言いかける
そしたらMが「え なあに?」と向き返り
なんだかワルイ予感がしてくるが
Mが突然
「ねぇS もうT君に抱いてもらった?」と
反撃に出て
それから女同士のあからさまなシモネタと
不思議と純真そうな照れ笑い
ウワバミでなおかつ食欲旺盛なTと
めちゃくちゃに陽気なMが次々にワインを空けて
その勢いにすかさず刑事みたいなSが
口をはさんで
時間が過ぎていく
SはTと付き合っているという割には
酒は飲まないらしく
そのうち ひょいと横になり
Tの胡坐をかいた右足を枕代わりに目を閉じる
Tも呑みすぎることがあるものか
そのままそこでゴロリと大の字になり
気がつけば時計は
とっくに12時を過ぎていた
わいわいと馬鹿話とキワドイ話の連続で
こんなにも時間が早く過ぎたのを
オレは奇妙な気持ちで受けとめる
いや受けとめてはいなかったのかも
しれなかったが
三人の押しかけサンタに酔わされて
楽しい
いやもしかすると
幸せな気分になっていたのだと
オレは誤魔化していた自分が気になって
立ち上がって窓際に行き
カーテンを少し開けて外を見た
星はあまり出ていない
予報では雪になるかもしれないと言っていた
もし伝説が史実なら
キリストが生まれた夜には明るい星が
三人の博士たちを案内したはずで
しかしその夜には
神の子の誕生を恐れた
ヘロデ王が差し向けた兵士たちが
家々の戸口に立って
新しく生まれた男子を探していたのでは
なかったか
降誕を知らせるただ一つの星を除いたら
それは暗い夜だったにちがいない
Mが立ち上がってそばまでやって来て
オレにくっつくようにして窓から外を見る
酔ったのかMの身体が温かい
オレは
「なんだか暗いな」と独り言のように言い
それから
「未踏ちゃんは今頃どうしてるのかな」と
ポツリと言ったMに驚いて振り返る

こめんとらん

