じりじりと時間ばかりが過ぎていく
時間とは流れる水のようにつながって
するすると進んでいくものなのか
それともくっきりとした区切りを刻んで
階段を昇るように立ち上がっていくものか
レスポワールに傷ついて
壊れかけている未踏を置いたまま
帰った僕の時計の針は
素早く進むようでそうでなく
石のように動かないようで
いつの間にか進んでしまう
それきり未踏は なんにも言ってこなくなり
僕は僕で
話したくないひとに話させる気になるはずもなく
未踏と僕のあいだには
日に日に寒くなる冬が居て
手を取り合うことを妨げていた
レスポワールのGさんに電話をかけてみたけれど
「相変わらずよ 未踏ちゃん 来たり来なかったり
さっきはオーナーとしばらく話をしていたけれど
今日はもう帰ってしまった
まるでゼンマイの切れたオルゴールみたいだと
オーナーが嘆いてたわ」
時間が経てば経つほど不安はつのり
未踏が自分で越えなければいけない坂だと
僕は自分に言い聞かせるのに疲れ果て
気持ちに負けて
かけた電話に
未踏は出ることはなく
未踏の時間もそうやって
なすすべもなく進んでいるのだろうか
この一年と少しの時間の中で
ぱさぱさと乾いた雪のうえを転がるように
夏の終わりの高波のどんと崩れてくるように
素早く深まっていったつながりは
二度目の冬を越すこともなく
淡雪のように消えるのだろうかと
感傷的な言葉の渦を作っても
事実は何も変わらなかった
このことは冷たい冬が僕たちを
凍てつかせたわけじゃなく
いくつもの熱い想いがお互いを包もうとして
何かが少しだけまちがって ふわっと
起きたことだったに違いなく
それゆえなおさら手をつけようのない
それはまるで
楽しすぎるダンスのときに
我を忘れて踊ったために折れてしまったヒールのようで
くるくる周った絹のスカートが
クリスマス・ツリーのガラスの星に軽く触れただけなのに
さっくり深く切れ込んで
できてしまったカギザキのようでもあって
このことはたぶんもう
もとに戻すことはできなくなった
確定しきった事実なんだと
次第に僕は思うようになり
その中で
せめて何かが救えるのなら それは
未踏と
未踏の歌であるべきだ
と
それ以外はどうでもいいと思うようになり
もしかすると
僕の失うものは大きくなるのかもしれず
予想するだけでも息が詰まったけれど
僕には
美しいものが壊れていくのを見つづける方が
比べようもなく辛かったのだ
それがどういう形でできることかは
わからないまま
クリスマス・イブになれば何かが
きっと変わる
と ただ
根拠もなく信じるほかはなくなっていた
未踏の時間がどのように過ぎていくのか
知るよしもなく
そうして僕の時間は過ぎていく
くることができるかどうかわからない
でも 大切な 僕の大切な
未踏を待ちながら

こめんとらん
