明けましておめでとうございます

 美しい青空で年が明けました

さいたまはもう何日もこんな空が続いています

夜は月もきれいです オリオンもゆっくり広野を渡っています

 

どれだけの人が空を見上げ 月を眺め 

この禍が終わってくれることを願い祈っていることか

 

12月の読書


鬼滅の刃 23 (ジャンプコミックス) 鬼滅の刃 23 (ジャンプコミックス)   吾峠 呼世晴


 終わってしまいました。春、休校中の孫に薦められて手に取り、全巻繰り返し読みました。どの巻にも心に響く言葉や場面があり、どの登場人物にも心惹かれました。

 『光り輝く未来の夢を見る~たとえその時自分が傍らにいられなくとも 生きていてほしい 生き抜いてほしい あなたが私だったらきっと 同じことを思うはず』

 穏やかな表情で空を見上げる実弥と義勇には、仲間たちの声が聞こえるのでしょう。彼らが暗い夜に死闘を繰り広げていたことをほとんどの人は知らないけど、家族と仲間の思いを受け継いで生きていこうとする姿に胸が熱くなります。



羊をめぐる冒険(上) (講談社文庫) 羊をめぐる冒険(上)   村上 春樹


 物語は1970年から始まります。何が待っているのだろうと、まるでミステリーを読むようにドキドキしながら読み進めました。独特な感性の文体、不思議な登場人物。数冊しか読んでいませんが、村上作品の主人公は、考え方や生き方に悪意がなく清潔ですね。

羊をめぐる冒険(下) (講談社文庫) 羊をめぐる冒険(下)


 読みながら気づきました。多分わたしはこの作品の目指すところへたどり着けないだろうなと。おもしろくて、先が気になって、誰かに手を引かれるように読んでいたのですが、考えても感想は書けそうにありません。十二滝町の話と、「先生」がその部落の出身だとわかったところでぞくっとしたのですが、その意味は分からずじまいでした。  

 


100年たったら 100年たったら  石井 睦美


 広い草原で独りぼっちで生きているライオン。飾りの少ない文と大胆で力強い絵が、ライオンの孤独の深さを物語ります。壮大な夕日も星々が瞬く夜空も、ライオンには美しい風景ではなく寂しいだけの風景のよう。

 そんなライオンのもとに1羽の小鳥があらわれ、いっしょに暮らし始めました。「幸せ」とは書かれていませんが、ライオンがどれほど幸せだったか…。でも「100年たったらまたあえるよ」という言葉を残して小鳥は旅立っていきます。誰かを思う喜びと、その誰かを失った後の悲しみ。それでもなお誰かを思うことのすばらしさが胸を打ちます。



君が夏を走らせる (新潮文庫) 君が夏を走らせる   瀬尾 まいこ


 よけいな老婆心で、いやいやケガさせないでよ、やけどさせないでよとハラハラする場面もありましたが、神経質に先回りして規制するより、おおらかにいっしょに楽しむ方が勝ちですね。フラフラしていて頼りない自分を頼ってくれた先輩夫婦。何より全身でぶつかってくる1歳10ヶ月の鈴香。信頼されることが人にとってどれほど大切なことか、改めて考えさせられます。

 信じてもらえる自分を、自分も大切にしなくてはと、走ることに向かって進み始めた夏。夏が終わっても、彼は走り続けていくのでしょうね。すてきなタイトルです。和音さんもすてきです。



共謀捜査 (集英社文庫) 共謀捜査   堂場 瞬一

 

 シリーズ6話目。手に取った瞬間、やっぱりと思ってしまいました。シリーズ5話の感想に、次の舞台は海外?と書いたのですが、やはり事件の始まりはフランスでした。

 「検証捜査」で活躍した6人が登場したのですが、お互いの性格や考え方を分かったうえでの大人のつき合い。疑問に思うところがあっても、事件解決のために仕事に集中するところはさすがです。こういう人間関係はいいですね。「複合捜査」の最後を思い出しました。

 それにしてもロシアはアメリカの大統領選挙で暗躍したり、政権に反対する人物を暗殺したり、スパイの多そうな国ですね。この本はフィクションですが。



わが人生に悔いなし わが人生に悔いなし  なかにし礼


 誰にとっても人生は重くかけがえのない物語ですが、生死の間をさまよったり、目の前で人が無残に殺されたりする経験はそう誰でもがするものではないでしょう。歴史の記録に残るような時代、想像を絶する経験の中で生き抜いてきた一人の人間が、それでも人や音楽、文学と出会って「悔いなし」と言えるような道を選び取ってきた、その生きる力に感心しました。コメンテーターとしての印象が強かったので、若いときにたくさん聴いた歌がなかにし氏の作詞だったと知って、その歌に秘められていた思いを改めて考えました。

 わたしの人生も残り時間が少なくなってきましたが、悔いなしと言えるのかどうか…考えないことにします。

 

孫へのお年玉 袋は手作りです

どれだけ「鬼滅の刃」にはまっていることやら^^;。


 


隠された悲鳴 隠された悲鳴  ユニティ・ダウ


 感想を書くのもつらい作品です。あまりの悍ましさに気が滅入り、それでもいくらか希望が見えてきたと思ったら最後にまた絶望感に襲われ、社会にはどれだけの闇が潜んでいるのだろうと怖くなります。

 「三つ編み」で女性が男性の所有物として扱われる話に、今回は少女が男たちの生贄にされる話に打ちのめされ、世界にはこんな扱いを受ける女性たちがたくさんいるのだと改めて思い知らされました。文化や伝統、宗教という名のもとにどれだけの人の命や暮らしがゆがめられていることか…。権力や富をもつ者が、保身のために使っているとしか思えません。

 作者は、ボツワナの現外務国際協力大臣。フィクションですが、実際に起きて取材したことが土台になっているのだと思います。女性たちが壁を打ち破って前へ進もうとするエネルギーと、それを阻もうとする権力者たちのしたたかさ。そこに小さな村で支えあって生きる貧しい人々のつながりや家族への愛情も絡まっていて、考えさせられる結末でした。



花咲小路三丁目北角のすばるちゃん (ポプラ文庫) 花咲小路三丁目北角のすばるちゃん   小路 幸也 


 高校を卒業したばかりの若さでも、駐車場経営で生活していけるような穏やかな町。そして、やさしい町の人々。いろいろあっても、知恵を出し合い助け合えばたいていのことは何とかなる、というお手本みたいな町です。こんな商店街が近くにあったらいいですね。1丁目の刑事さんも登場して活躍。亡くなった父親の魂が車に宿って話ができる…そんな不思議なできごともいっしょに楽しめる作品でした。



三つ編み 三つ編み  レティシア コロンバニ


 想像を絶するほど過酷な生活を強いられている人は、それこそ想像もできないほどたくさんいることでしょう。男女に関わらず、世代に関わらず。でも、インド不可触民の女性の章は、つら過ぎて苦しい読み始めでした。個人の努力ではどうにもならない過酷さです。

 癌を患い生命の危機に直面するカナダの女性の現実も厳しいものです。その二人の女性をつなぐ髪の毛を編んだイタリアの女性。3人の女性がそれぞれに運命に立ち向かって歩き出しますが、その道の向こうに希望があるのかはわかりません。ただ、今いる場所に希望がないことだけはわかります。

 暗い場所でうずくまっているよりは、扉を開けて歩き出してみよう。そう背中を押してくれる作品です。



五十八歳、山の家で猫と暮らす 五十八歳、山の家で猫と暮らす  平野 恵理子


 両親の残してくれた山の家、八ヶ岳南麓での暮らしを綴った作品です。横浜の家から移り住んだ3年間の暮らしの厳しさ、驚き、喜び、そして自然の美しさが、イラストと同じように素朴で味わい深く描かれています。

 58歳という年齢の支えも大きいのでしょうが、一人で暮らすことを心地よいと思える感性の豊かさと強さに惹かれました。猫はいますが。

 虫の章、雪の章、小鳥の章などいくつかの章があって、どの章もおもしろいのですが、モラトリアムの章の『亡くなった両親の家を片づける悲しく辛い経験』についての文に、自分もそうだったなと共感。ちなみに、猫はあまり登場しません。



星の子 (朝日文庫) 星の子   今村夏子


 この本が話題になったとき、「怪しい宗教にのめり込んだ両親」と暮らす子どものつらさを描いたものだと、勝手に想像してなかなか手に取れずにいました。 読み始めてからも姉の家出の場面で、これからもっと恐ろしい展開になるのかなと重い気持ちでいたのですが。

 わたしの発想は、雄三おじさんや嫌だけど南先生と同じなんだなと、子どもを思う親の愛情と、親を思う子どもの愛情にハッとさせられました。

 すべてを受け入れるのは難しいのですが、ちひろや友人たちのやわらかな考え方や性格に、大丈夫と信じたくなってしまいました。



おじさんと河原猫 おじさんと河原猫  太田 康介


 作者太田さんのブログを読んでいるのでだいたいの内容は知っていたのですが、あらためて読んでみました。

 広い河原と猫たちの姿はやっぱり切ない、猫たちを守ってくれた二人のおじさんの最後も切ない…。そんな中でもあきらめずに、できることを考えて行動する太田さんやいっしょに活動する方々がいることに、猫だけでなくわたしも救われます。写真家なので写真はもちろんですが、文もとても上手で、猫への思いがしみじみと伝わってきます。わたしも何匹か保護した猫を里親さんのもとへ届けましたが、猫も里親さんも幸せになってくれることを願っています。



表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬 (文春文庫 わ 25-1) 表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬   若林 正恭


 テレビの中ではにかんでいる若林さんが、まるで隣にいて話してくれているような旅の本でした。

 知識や情報だけではわからないもの、そこに行ってそこで暮らす人々とふれあい、そこに吹く風を肌で感じなければわからないものが旅にはあります。そんな旅で、若林さんが自分を見つめ、なぜこの旅に出たのか考え、そして少しだけ探していたものを見つけることができて、わたしもいっしょに旅をし、いっしょに考えることができました。多分それも知識だけの部類に入るのかもしれませんが、旅だけででなく、若林さんの思いにも共感して帰ってきました。

 

 

 

幸せの後ろ姿

 

1年前に保護した猫

人には馴れず抱っこさせてくれませんが

先住猫とはとても仲良しです。本人がよければそれでよし、ですね。

 

 カレンダーが残り1枚になってしまいました。時の流れに区切りがあるわけではありませんが、一日の終わり、ひと月の終わりを意識することで、少しだけ気持ちに区切りがつきます。

 ときの流れとわたしの老いとどちらが速いのか焦ってしまいますが、今年のうちにやっておきたいことをリストアップして、気持ちよく1年を締めくくれたらと思います。

 片付け、掃除、猫のこと、孫のこと…etc. 自分のことも少しはやらなくちゃ。コロナ禍のせいにして、今年は検診にも歯の定期検査にも行ってないなと反省。常に自分ファーストの夫が羨ましい、恨めしい^^;。

 


 

 


さよなら、田中さん  さよなら、田中さん    鈴木 るりか


 先に「14歳、明日の時間割」を読んでいたので、図書館からの連絡を楽しみに待っていました。

 読み始めたら閉じられない面白さ。お母さんや娘の花実、大家さんやその息子とのやり取りがユーモラスで思わず笑ってしまいますが、決して甘い話ではなく、むしろ今の社会がかかえる問題はそのまま問題として残されているように思えます。

 それでも、そんな社会に振り回されず、自分の価値観をしっかり持って生きていこう。貧しくてもお互いを思いやる気持ちがあれば、人は強くなれる、幸せになれると、母子の元気な声が聞こえてきます。いい母子ですね。

 


もの食う人びと (角川文庫) もの食う人びと   辺見 庸


 本で読むだけでもつらいけど、実際にそこに身を置き、自分の目で見たら…耐えられないかもしれません。他人の残飯を食べて生きる人々。支援物資だけが頼りの人々。放射能に汚染されたものを食べる人々。世界のゆがみはますます大きくなり、世界中を知ることができる時代なのに、知らされないことが増えていくような気がします。

 知らなければ、このゆがみをなくしたいと考えることも行動することもできません。でも、知ってもどうすることもできずに、これからも変わらない生活を続けるしかないのでしょうか。

 


すべての神様の十月 (PHP文芸文庫)  すべての神様の十月    小路 幸也

 

 やっぱり読むなら十月かなと思い、かわいい表紙にも惹かれて手に取りました。

 いきなり死神の登場で心配しましたが、イケメンでけっこうやさしい神様でした。その後に登場する神様もみなおっとりしていて、誰もが人間の幸せのため動いてくれているようでした。

 そう、天罰を下したり大業なことを言って人心を惑わしたりするのではなく、そっとそばにいて、穏やかに微笑んで、まじめに生きる人の幸せを祈ってくれる、そんな神様がいいですね。

地には地の神、海には海の神。八百万の神様に感謝です。

 


苦悩する男 上 (創元推理文庫) 苦悩する男  上下    ヘニング・マンケル
上下巻700㌻の長い作品を読み終えて、どう感想を書けばよいのか考え込んでしまいます。作者ヘニング・マンケルも主人公ヴァランダーもいなくなってしまいました。これまでの作品でも心身の不安定さがたびたび描かれてきましたが、今回は脳の不安も加わって、事件よりこちらの方が怖いくらいでした。

 

 苦悩する男 下 (創元推理文庫)事件は冷戦時代のソ連や東ドイツに始まるスパイに関するもの。前に読んだ『湖の男』を思い出してしまいました。

 「ラトヴィア人一人ひとりの後ろにロシア人がいる。ロシア人の後ろにはアメリカ人がいる。」

誰にも気づかれないところで暗躍し、誰にも気づかれないように葬られる人がいる、そのことさえ闇に封印されていく…。この作品は終わっても、そしてヘニング・マンケルはいなくなっても、そんな怖ろしいミステリーは現実の世界でずっと続いていくのでしょうね。

 


ひかりの魔女 (双葉文庫)  ひかりの魔女   山本 甲士


 重い北欧ミステリーの後は少し気持ちがほっこりするものをと、書店で探してみました。年齢が近いわたしでも、こんなおばあちゃんがいたらいいなと頼りたくなってしまうおばあちゃんでした。

 ていねいで素朴でおいしいご飯。言って聞かせるのではなく、いいところを認めて感謝し、自分を大切にしようと思わせてくれる接し方。そして、立禅で鍛えた体。ちょっと盛り込みすぎ、でき過ぎですが、魔女ですから。やさしい気持ちにさせてくれる作品でした。

 


樽とタタン (新潮文庫)  樽とタタン   中島 京子

 読み始めはなかなか物語の中に入って行けず、ずっとこのままだとつらいなと思っていたのですが、祖母との思い出の章からおもしろくなってきました。「ぱっと消えて、ぴっと入る。」長く生きた人の名言ですね。祖母と学生さんの話が好きです。老いた小説家はどことなくうさん臭く感じられて正体がつかめなかったのですが、最後に言った言葉に納得。

「小説家に聞いちゃいけない質問が一つだけある。『それは本当?それとも嘘?』ってやつだ。」

だから、わたしもこの物語が本当にあったことなのかどうか、深く考えないことにします。



孫が描いた 話題の煉獄杏寿郎  けっこうはまってます。 

 

 

10月はあわただしく過ぎていきました。

15歳の老猫が肺炎になり、ドクターに覚悟した方がいいかもと言われてしまいました。

離れている間にいなくなるのは嫌だと思い、夜はそばでいっしょに寝て昼間は毎日病院通い。

何種類かの注射で少しずつ症状が改善してきて、半月たってやっと安心できる状態になりました。

 

同じ頃、屋根と壁の塗り替え工事も始まって、家の周りを片づけたり職人さんにお茶を出したり。

足場の組まれた暗い家の中で老猫とじっと過ごしていました。

 

今年最後の保護猫を里親さんに届ける仕事もありました。

さいたま市から遠く多摩市まで、高速道路を二つ使って、69才の高齢運転手が車を走らせて届けてきました。

これが一番疲れたかな。

でも、里親さんが喜んでくれて猫も幸せになれて、わたしも幸せな気持ちになれました。

 

そして、仕事をしていた頃の同僚が70才で急逝し、お見送りに行ってきました。

まだまだやりたいことがあったのに、本人の無念さとご家族の悲しみを思うと言葉が出てきません

忘れがちですが、死がけっこう近くにある年齢ですね。

 

カレンダーは残り2枚。穏やかな日々であってほしいものです。

 

  

                 北欧ではありませんよ^^;。街の公園です     

 

 

                庭の萩

 


やさしいねこ (扶桑社文庫)  やさしいねこ   太田 康介


 以前に単行本で読んだのですが、文庫本も出たというのでこちらも購入。写真はやはり大きい方が迫力がありますが、ぽーのやさしさは十分伝わってきます。太田さん      の猫たちに寄せる愛情も。 ぽーにかける言葉、ぽーの代わりに発する言葉、どちらも温かく味わいがあって写真とピッタリです。

 

 昨日読み終えたのですが、昨夜我が家の老猫も眠ったまま静かに旅立っていきました。ぽーと同じで外で生きていたのを保護し、5年いっしょに暮らしました。最後は認知症気味で

オムツをしていましたが、老衰でも死を受け入れるのはつらいですね。

 


ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー  ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー  ブレイディ みかこ


  いいタイトルだと思ったら、息子さんのノートから拝借したものだったのですね。息子さんの感覚、考え方がまっとうで、その息子さんを囲む両親の考え方も柔軟で、共感したり羨ましくなったり、何よりとても考えさせられる読書でした。

 人種のるつぼと言われるイギリスですが、人種だけではなく貧富の格差、家族の形、LGBTQなど様々な課題が混在していて、それは子どもの社会でも同じ。これがベスト、と言える答えは人それぞれで見つけるのは難しいけど、「誰かの靴を履いてみる」エンパシーを身につけることで、きっと良い方向へ進めますね。



月まで三キロ  月まで三キロ  伊与原 新 

 

 あの美しい月まで三キロ…。その魅力的なタイトルに惹かれて図書館に予約し、待つこと半年。届けられた6話は「地球惑星科学」博士からのやさしい教科書でした。

 登場する人々はみな、ままならない人生を歩んできて迷いや悲しみをを抱えています。彼らの出口の見えない思いと、地球や広大な宇宙が放つ無言のメッセージが深く絡み合い、自分の力でまた歩き出そうとする、希望の感じられる心地よい着地でした。

 月が一年に3.8㎝ずつ地球から遠ざかっているのは寂しいことですが、ずっとこの宇宙が存在し、人々の営みが続くようにと願います。

 


ナゲキバト ナゲキバト  ラリー バークダル 
この本にこめられていたもの。祖父が孫に語る愉快な話、素朴な暮らし、友達との楽しい遊び…。ほのぼのとした雰囲気を想像していたのですが、ページをめくるたびに出てきたものは、後悔、悲しみ、嘘、やりきれなさなど、胸が痛くなるほどの『生きること』でした。

 9才の孫に、静かに、ときには無言で、その経験の意味するものを語る祖父の言葉はとても重く美しく、それは、祖父が歩いてきた道の険しさ故で、祖父の胸の中にもずっとナゲキバトの鳴き声が響いていたのでしょう。読み終えて、わたしの中にもナゲキバトの悲しい声が響いています。

 


カフーを待ちわびて (宝島社文庫) カフーを待ちわびて  原田 マハ


 沖縄の海や空の美しさと、そこで暮らす若者たちの素朴な交わりが、うらやましいほどに眩しい作品でした。読みやすくわかりやすい表現ですが、大切なことや深い思いがあちらこちらに散りばめられていて、その一つ一つが胸に沁みます。

 主人公明青が突然やってきた見知らぬ女性幸に寄せる思い、幼馴染たちの友情、島に伝わる風習や言い伝え。何より心に残ったのは、明青とおばあが互いを思うやさしさと、飼い犬カフーとの繋がりです。とくに明青とカフーが海辺で遊ぶ場面。自分が住む島をこんなに好きでいられるなんてすてきだなと思いました。

 

 

マカロンはマカロン (創元クライム・クラブ)  マカロンはマカロン   近藤 史恵


 キリコさんがいなくなってしばらく遠ざかっていた作者。キリコさんと同じように、仕事を愛する人々が仕事を通してお客さんのために思いを巡らします。おいしく食べてもらうために、悩みや悲しみを少しでも減らしてあげられたら、ということでしょうか。謎が解けて一段落の話の中に、一話だけこれからも大変なことが続きそうな話とがありました。『マカロンはマカロン』。自分と違う人を素直に受け入れられない人はたくさんいます。受け入れてもらえない人のつらさを、まずは身近な人がわかってあげてと、静かなメッセージが伝わってきます。

 料理にかけるシェフの情熱はすばらしいのですが、おいしいものへのこだわりが少ない身としては、ここまでして味を追求しなくてもという場面もありました。乳しか飲んでいない羊を食べなくてもと。お肉は食べるのできれいごとでしかないのでしょうけど。

 


ロードムービー (講談社文庫)  ロードムービー   辻村 深月


 短編集ですが、読み進めるほどに物語に惹きこまれ、登場する人々が、若さが、辻村さんが好きになります。人を傷つけたとき一番傷つくのは自分で、好きな人の幸せを心から願える人が自分は幸せだと思える…。たくさんの苦しい経験をしてそのことに気づき、だから自分を信じてその道を進んでいけばいいのだとやさしく勇気づけられます。

 もうかなり遠くまで歩いてきた身としては、どのページのどの人も愛おしく、こんな純粋さを大切にしてほしいなと思ってしまいました。

 

 


祈り (文春文庫) 祈 り   伊岡 瞬

 

 500㌻近くを一日で読んでしまいました。おもしろいのと、先が気になって。

特別な力をもっているけど、その力ゆえに目立たぬよう平凡に生きる春輝。そんな力も運も無さそうな冴えない颯太。この二人の関りとタイトルの意味は何だろうと考えながら読み、読み終えてまた考えてしまいました。これは作者の祈りなのでしょうか。それとも『ダニーボーイ』と歌う母親の祈りなのでしょうか。何だかもやっとしたものが頭の中に引っかかっていますが、寂しく美しい歌を聴いて、これ以上悩まないことにします。鶴巻と真澄が魅力的でしびれました。

 


棲月―隠蔽捜査7― (新潮文庫)  棲月―隠蔽捜査7―   今野 敏


 安定のおもしろさですが、竜崎や周りの人物が次に何を言い、どんな展開が待っているか予測通りに進む、そういう安定もあって、もう少しハラハラどきどきする場面も欲しかったなと思いました。今回は人事異動に伴う竜崎の心の動きがもう一つのテーマでしょうか。仕事をしているとき、「異動は最大の研修だ」と言われたことがあります。大森署への異動は、竜崎にとっても他の職員にとっても価値のある研修だったようですね。最後の見送りの場面では、もう少しこの雰囲気に浸っていたいのにと思ってしまいました。また次の異動先での活躍を期待します。



口笛の上手な白雪姫 (幻冬舎文庫) 口笛の上手な白雪姫   小川 洋子

 

 目を凝らしても見えない、耳を澄ましても聞こえない。でも、気づかないほどの小さなすきまに静かに在る世界。小川さんはそんなひっそりとした不思議な世界を見つけるのが本当に上手です。その静かな世界の心地よさにずっと浸っていたいと思うのですが、今回はちょっと見えない方がよかったかも、という世界もありました。

 「先回りローバ」が好きです。老婆じゃなくてローバ。いいですね。

 

 

先月は老猫の介護や外猫の保護で忙しく過ごしました。

1匹ですが、里親さんが見つかって幸せになれた猫もいます。

 

ちょっと緊張気味^^;。

 

今月も、と頑張ってはいるのですが

なかなか猫に気持ちが通じなくて…。

逃げ回れるくらい元気なうちはいいのですが

老いてきたり、怪我や病気をかかえたりすると

外の世界はなかなか厳しいものがあります。

 

秋が深まっていきます。

 

 

 

                      8月の読書



湖の男 (創元推理文庫)  湖の男   アーナルデュル・インドリダソン

 

 犯罪捜査官エーレンデュルシリーズ4作目。『この地に送られるほど外交官にとって最悪なことはない』とまで言われるアイスランドと冷戦時代の東ドイツが舞台となって、重く暗い物語が交互に語られます。

 「チャイルド」を思い出させる社会主義国家の非情な闇に、今もこれに近いことが起きている国があるはずと、やりきれない気持ちで読み進めました。エーレンデュルの抱える問題も相変わらずで、作品に登場する人々の誰もが生きることの困難に耐えているようでした。

 それでも人は生きていく…明るさの欠片もない物語からそんな声が聞こえてきます。

 

 

月と六ペンス (新潮文庫)  月と六ペンス   サマセット モーム

 

 読み進めるほどにおもしろくなり閉じられなくなりましたが、苦しくもなりました。

 芸術に対する狂気のかけらも持ち合わせていない世俗的な人間からみると、こんな狂気からは離れていたいと思うほど。でも、幸か不幸か関わってしまった人々は、苦悶しながらも自分の芸術のためだけに生きる一人の画家に、畏敬の念さえ抱いてしまうのでしょうか。自分が傷つけられ虐げられても、画家の苦しみを受け入れ許そうとする姿に悲しみさえ覚えました。

 画家の生きた道をたどる小説家「わたし」が、登場する人々を愛情をもって描いていることに救われました。

 


光待つ場所へ (講談社文庫) 光待つ場所へ   辻村 深月

 

 辻村さんの描く若者は自分と深く向き合って生きています。周りからどう見えるかより、どんな自分でありたいかと。彼らは特別な存在にも見えますが、平凡に見える人の中にもそんな特別がそれぞれの輝きで潜んでいるのが青春です。そんな時代を通って生きてきたから、どの若者もすてきですが、何人か登場する大人たちの大きなやさしさもいいですね。 

 あれこれ考えながら読んで、思わずホッとした場面、一番好きな場面がここ。

「うちの親、ヤクザじゃなくてメロン農家です。」



ホワイトラビット (新潮文庫) ホワイトラビット   伊坂 幸太郎

 

 殺し屋シリーズ、と言っていいのでしょうか。

 作中に出てくる「レ・ミゼラブル」。映画で観ました。残念ながら5年かけたじっくりの読書はしていませんが。そして、オリオン座。冬の夜の散歩は、いつもオリオンといっしょで、ペテルギウスが爆発してしばらくは明るい夜が続くのを見てみたい、なんて思いながら久々の徹夜状態でした。

 いっきに読ませるおもしろさはさすが伊坂さん。えっ、どういうこと?と迷子になり、よくまあこんな展開を考えつくものだと感心してしまいました。人の痛みのわからない悪人はしっかり報いを受ける小気味良い結末。立場は違っても気持ちが分かり合える関係。伊坂流の『良き物語』です。生まれて死んでいくのが人生だけど、その間には、あってほしいことも、あってほしくないことも、いろいろあるから人生ですね。



夜猫ホテル 夜猫ホテル  舟崎 克彦

 

  まず、美しい猫の瞳に惹きつけられました。ルイ・ルイ、ガラ、フーガ。名前があるということは、かって誰かの猫だったということですね。そして4匹目の猫の名前はなんとデジャ・ヴ。そのヴがいなくなった飼い主について話し始めたときから、物語が不思議な迷宮へと入っていきます。人間のわたしは入っていけません。

 「とても重い人生を背負った方が このホテルに近づいている」 

物語には入っていけないけど、よければ、そのホテルで休ませてもらいたいものです。

 


対岸のヴェネツィア (集英社文庫) 対岸のヴェネツィア   内田 洋子

 

 写真で見るイタリアはほとんどが太陽の光を浴びていて明るい国という印象ですが、この本で語られるヴェネツィアは観光の街ではなく、暮らしにくさや表からは見えない負の部分なども描かれていて、ちょっと気持ちが暗くなります。でも、それも含めてのイタリアの魅力なのでしょう。

 驚いたのは、作者が数年間も木造帆船で暮らしていたということ。モンテレッジオの旅する本屋のときもそうでしたが、行動力と本への情熱に感心しました。その情熱に男女は関係ないはずですが、ゴンドラの漕ぎ手に女性はなれないとか。

 対岸の意味について考えさせられます。

 

 

         

 

暑い暑い8月でした。

7月は雨の降らなかった日が一日だけ。

8月は反対に雨の日が一日だけ。

そして、9月に入ったとたんに台風の影響で雨やら雷やら…。

 

それでも、庭のすみっこでけな気に秋の花が咲く準備を始めています。

自然の律儀なこと。

今月、わたしはまた一つ歳を重ねます。体も頭もくたびれてきて

老いも律儀にやってきます^^;。

 

 

我が家に来て15年。15才の高齢猫です。

毎朝、「早く朝ごはん!」と起こしに来ます。

食に関してだけは律儀な奴…。