チェコを代表する小火器メーカー、CZの拳銃(戦後編) | ジャック天野のガンダイジェスト

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スモールアームズ(小火器)に関するエッセイです。同じアメブロで書いていたブログを継続して、不定期で更新して行きます。

第二次世界大戦が終わるとすぐにCZはVz 45(写真1)を発売します。これは戦前のVz 36の復刻版で、FN製品によく似たポケットピストルでした。口径は.25ACP(6.35X16mmSR)で、弾倉には8発装填することができました。作動方式はシンプルブローバックで、後にCZ 92としてアメリカで販売されることになります。1950年には警察用として、Vz 50(写真2)が発売されました。写真でわかるようにワルサーPPKに似た.32ACP(7.65X17mmSR)のダブルアクションオートで、弾倉には8または9発を装填することができました。作動方式はシンプルブローバックです。1952年になると、ワルシャワ条約軍の制式実包である7.62ミリトカレフ弾(7.62X25mm)を採用したVz 52(写真3)が登場します。じつはこのVz 52は9mmパラベラム弾(9X19mm)で設計されていたのですが、ソ連の命令によりトカレフ弾を使うように再設計されました。トカレフとは外観デザインも違いますが、作動方式がローラーロッキング方式ショートリコイルを採用しています。弾倉に8発を装填することができました。この拳銃の外観は1968年に登場したオーストリアのステアーGBに似ています。2023年に起きた埼玉県蕨市の郵便局立てこもり事件の被告が使用した拳銃はトカレフTT33とステアーGBと見られていましたが、もしかするとステアーGBではなく、外観が良く似たCZ Vz 52かも知れません。そうすれば実包が共用できることになりますから、真実味を帯びてきます。1970年にはVz 50をアレンジしたVz 70(写真4)が発売されました。さらにワルサーPPKに似ていて洗練されたデザインとなっています。そして、1975年にCZ 75(写真5、6)が登場します。もともと7.62mmトカレフ弾用に設計されていましたが、9mmパラベラム弾用に再設計され、ダブルコラムの弾倉には10発またはそれ以上の実包が装填できるようになっていました。まだ作動方式はティルトバレルのショートリコイル方式で、ダブルアクションでした。つまり、FNハイパワーとワルサーP38のいいとこどりをしたような完成度の高い拳銃でしたが、9mmパラベラム弾使用(のちには9X21mm弾のバージョンも登場)のため、ワルシャワ条約軍の規格に合わず、軍制式となったのは1989年のビロード革命以降になります。そして、西側諸国にも輸出されるようになります。なお、このCZ 75を使用する機会があったコンバット・シューティングの神様と言われるジェフ・クーパーがCZ 75をベースに10mmオートのBren Tenの開発のきっかけを作ったことは有名ですね。このCZ 75はさまざまなバリエーションが作られました。1982年にはCZ 82(写真7)が登場しました。ワルシャワ条約軍の制式拳銃がトカレフからマカロフになったため、CZも9mmマカロフ弾(9X18mm)を使用するダブルアクションの自動拳銃を製作したのです。ダブルアクションで、シンプルブローバックの拳銃でしたが、ポリゴナル銃身を備えていたのが特徴です。また、弾倉はダブルコラムで12発を装填できました。外観デザインもオリジナルのマカロフよりもずっと洗練されていますね。また、口径を9mmマカロフのほか、9mmショート(.380ACP)、.32ACPとしたCZ 83も製造されました。そして、軍制式としてはスロバキアで使用されました。そして1997年には.45ACPのCZ 97(参照)が作られ、西側諸国とりわけアメリカに輸出されるようになりました。