immanu el
they’ll come, they come


スウェーデンの4ピース、immanu elのデビュー・アルバム。美形の双子に北欧サウンドに、容姿に負けない美麗メロディー。これで売れなかったら冗談だろうと思ったりしたのですが、人気は過熱しているようです。良かった。お前が売れると言うと売れないとか評判でしたから。一種芝居がかった神々しさがなくもない北欧叙情メロディはがっちり押さえているし、この若さでこのレベル。演奏力もソング・ライティングも磨きがかかれば、シガー・ロスの穴埋めだってできてしまう。皮肉でもなんでもなく、本気で。

それこそメンバーが怪しげなおっさんとかだったら嘲笑したいのだけど、透明感も遊離感も狙ったかのように彼らにピタリとはまっている。そして耽美ヴォーカル。今年のポスト・ロック新人賞(というのがあれば)彼らに一票投じますね。


immanu-el.com

myspace.immanuelband

Saturation Point

3




もしかしたらとんでもないベテランなのかもしれないブリストルの3ピース、SATURATION POINT。飽和点なんてややプログレっぽく感じられなくもない少しダサめの名前と裏腹に(?)これが非常に格好良い。ひたすらじんわりと泣かせにかかろうとするインスト・ロックの中で、彼らは轟音と衝撃を持ってしっかり「ロック」を演じようとしている(その姿勢までがロックかどうかは分からんです)。あと一歩間違えるとメタル坂かプログレ坂を登り始めたばかりだからな状態なんですが、微妙に踏みとどまっていて程よく重厚で奥深い。巧い。

重厚さとか鋭さというのはそればかりが突出してしまって、それがないと何の変哲もないサウンドに、なんてことはよくありますが、彼らは個々の要素が組み合わさってどう聴こえるかということに心を砕いているようで、聴き手の「これは○○だな」なんて断定を許しません。強いて言うとアシッド・フォーク~サイケ~クラウト・ロックを滅茶苦茶巧く行ったり来たりしている感。かと言って訳が分からんわけではない。何としてもライブで見たい。


SATURATION POINT.net

myspace.thesaturationpoint






XEROX TEENSからXX TEENSへ改名して代表曲である"Darlin'"リミックス12"リリース。B-2に収録されているオリジナルは波打ち際で叫ぶヴォーカルで幕を開け、ドラムとギターが四方に乱れ飛んでいくアホ・ダンス・ミュージックもしくはアホ・パンク。のどかなスティールパンが実に馬鹿馬鹿しい、そして楽しい。ニュー・レイヴって言い方はどうにも悪い意味でペラペラして若干寒さを伴っている気がしていたんですが(New Young Pony Clubとか)、こいつらは確かにレイヴの良い方の薄っぺらさと楽しさを持ってます。

そしてアンディ・ウェザウォールのリミックス。締まる。ペラペラ感は硬さと鋭さが加わり、馬鹿馬鹿しさは底抜けになり、高揚感が従来の120%増し(当方の感触比)。サッカーのユニフォームにダブダブのジーンズの兄ちゃんが突然格好良くなってしまった状態です。馬鹿になれ。そしてフロアで垂れ流すなり、なんなり。


XX TEENS.co

mysoace.xxteens



BBCの人気ラジオ番組Essential Mixで、先日亡くなったトニー・ウィルソンを称えるスペシャル番組を放送してました。

ホストのピート・トングの他に、かつてハシエンダでDJを務めていたマイク・ピッカリングが加わり2時間近くにわたってファクトリーの名曲とハシエンダでピーク・タイムに流れていたダンス・ナンバーをスピン。

"Transmission"で始まって"Getting Away With It"で終わるミックスを聴けるなんて思ってもいなかったので、1人耳を傾けていると、会ったこともないトニー・ウィルソンや通ったこともないハシエンダの思い出(?)が浮かんできました。


Hour 1

Pete Tong Factory

  1. Joy Division 'Transmission' (Factory 13)
  2. Joy Division 'She’s Lost Control' (Factory 10)
  3. A Certain Ratio 'Shack Up' (Factory 42)
  4. A Certain Ratio 'Knife Slits Water' (Factory 55)
  5. Joy Division 'Atmosphere' (Factory)
  6. Durutti Column 'Otis' (Factory 244)
  7. New Order 'Confusion' (Factory 93)
  8. New Order 'True Dub' (Factory 183 R)
  9. New Order 'True Faith (Morel Pink Mix)'
  10. Happy Mondays 'Step On (Accapella)' (Factory 272)
  11. Happy Mondays 'Hallelujah (Oakenfold Remix)' (Factory 260)
  12. New Order 'Fine Time (Steve Silk Hurley Remix)' (Factory 223 R)
  13. New Order 'Blue Monday (Original)' (Factory 73)
  14. New Order '5-8-6' (Factory 11CD)
  15. Electronic 'Getting Away With It (Nude Mix)' (Factory 257 R)
  16. Electronic 'Getting Away With It (Original Mix)' (Factory 257)

Hour 2

Mike Pickering Hacienda

  1. Marshal Jefferson 'Move Your Body' (Trax)
  2. Hashim 'Al Naafiysh' (BCM)
  3. Orange Lemon 'Dreams Of Santa Anna' (Champion)
  4. Adonis 'No Way Back' (London)
  5. Tcoy 'Carino' (Deconstruction)
  6. Jomanda 'Make My Body Rock' (BCM)
  7. Kenny Jammin Jason 'Can U Dance (Bonus Jack)' (Champion)
  8. Rhythm Is Rhythm 'Nude Photo' (Transmat)
  9. 808 State 'Pacific State' (ZTT)
  10. Marshall Jefferson 'Open Our Eyes' (FFRR)
  11. Inner City 'Good Life (Derrick May Remix)' (10 Records)
  12. Stirling Void 'Its Alright' (Dance Division)
  13. A Guy Called Gerald 'Voodoo Ray' (Warlock)
  14. Ce Ce Rogers 'Someday' (Atlantic)

こちら でUK屈指のDJ二人によるミックスをお楽しみください。

フリーでダウンロード も可能になっています。

Foreign Born
On the Wing Now


ロサンジェルスの4ピース、Foreign Bornのデビュー・アルバム。アメリカなのになぜかそこはかとなく英国臭い。この大げさで耽美とかメランコリックという言葉が似合いそうなアレンジは英国。メロンコリーじゃない。ヴォーカルも下のほうからそろそろ這い上がってくるような、このモリッシー的歌い上げ感が英国。イアン・マッカロク? いやそれだと何か例えにひねりがない。

妙に華々しいのだけれど、演奏自体は固いというか真面目で実直。こういう行儀の良さというか、全体としては自己主張が激しいわけではない所はアメリカのインディーらしい。でも小奇麗にまとまっているわけでもない。沸々と湧きあがる動きたくなる衝動は確かにある。ロックの良心がロックをやっている感じなのだ。ドラッグも下手な演奏も過激な発言も必要条件ではない。


Foreign Born

myspace.foreignborn

Blue States
First Steps Into


前作『THE SOUNDING』 でフォークトロニカ方面からロックに接近する姿勢を見せたBLUE STATESの原点回帰的な4thアルバム。このサウンドに辿り着くために前作があったのだとすれば、それは間違いなく成功しています。デジタルであればあるほど全くといっていいほど変化は起きないわけで、そこにどうやってズレや隙を与えていくかっていうのはこの手のミュージシャンなら皆悩んでるんでしょうけども。

単調になりがちなリズムにインディー・ロックの楽曲性を組み込んでチルなものにイルな部分も作り出す。生楽器のノイズや不安定さ(デジタルと比べてという意味で)を丁寧に、計算し尽したリズムで反映させることでBords Of Canada風なダウンテンポとロックのビートが同居する。Bords Of Canadaを聴き込むと飽きてしまった人でもBLUE STATESは飽きないと思います。


BLUE STATES.com

myspace.bluestates

Mekons
Natural


Gang of FourとかDelta5の流れを汲むポスト・パンク世代の中では影の薄いMekonsの3年ぶりのアルバム。泥酔しながら出鱈目フォーク風に暴れていた30年前とはさすがに変わりました。でもサラ・コリーナもスージー・ハニーマンも健在っていうのは嬉しい。懐かしいけれど、今もある感じというか、ああ自分が好きなバンドと自分はまだ繋がっているという嬉しさ。

アヴァン・フォーク~サイケデリアという最近のスタイルは変わっていませんが、酔っ払わなくても遊離感を出せるようになってます。フワフワと迷っているようなんだけど、行き場を失った迷いではなくて、達観してしまった迷いがある。色々見てきたから迷ってもむしろ楽しめる。泥酔バンドは青臭さこそなくしましたが、30年前のあの妙にキラキラした雰囲気を纏ったままポップ・バンドに化けました。


myspace.mekons




A Place To Bury Strangersのデビュー・フルアルバム。NYで最もヴォリュームを下げて聴きたいバンドと言われているんですよ、とか紹介されたのだけどこれはむしろフル・ヴォリュームで聴きたいサウンド。何だノイズかよ、って違うんですよ。デカいフィードバック・ギターで轟音出して、「見ろ!俺の音が1番歪んでる!」的な、90年代初頭のRideとかSwervedriverとかが、がっちり正面向いてロックをやっている雰囲気。格好良い。

そう、インディーとか轟音ってこれだった。少なくとも僕にとっては。直球でJesus & Mary Chainな音を、30過ぎたおっさんたちとかではなく、NYの若者が演っている。イギリス人にはきっと恥ずかしくてできない。皆シューゲイズになってしまうだろう。ビリー・コーガンとアラン・モウルダーとリード兄弟がニヤニヤして見える。ちょっとは痩せろよお前ら。それはともかく、やっぱりアメリカって凄い所だと思いました。


myspace.aplacetoburystrangers

Architecture in Helsinki
Places Like This


以前も紹介したArchitecture In Helsinkiの4thアルバム。何かが惜しいエレ・ポップ・バンドから完全に脱却した、6ピース・バンドとしての面白く素晴らしい1枚。バンドとして完全に機能しているというか、各人が役割を理解しているというか、ともかくスタンドプレーが物凄く上手く調和している。オーストラリアのセンスってダサいのか面白いのか分からんw。

ダブやディスコ・パンクがユーモアと能天気さを混ぜられてトロピカルになりました。それが延々グルグルと続くのです。これが楽しくないわけないし、まして流行らないはずがない(筈)! ひねくれているのとは違うんですよね。6人分の色がきちんと出ているから楽しめる。でもポイントは押さえているので鬱陶しくない。これもうちょっと早く聴いていたら、良い夏が過ごせたかもしれないと思ったり。


Architecture In Helsinki.com

myspace.aihmusic

Simple Kid
SK2


最近どうも音楽に対するアンテナの感度が悪い。Simple Kidのこの2ndアルバムも去年の暮れにはリリースされていたようなのだけど、今頃US盤で確認。人生の中で何度か音楽への情熱が薄れることがあると、師匠と仰ぐ人も申しておりました。何かしら音楽には触れておき続けたいのだけれど、そうもいかないんですかね。忙しい忙しいなんて言い訳には使いたくないんだけど。

さて、1stの頃と比べてさほど変わっていないようでもあるのだけれど、でも何と言うかセンスがグッと良くなっている。もっと言うと、良い意味での癖ができている。冒頭の"Lil’ King Kong"なんか、響き渡るファルセット・ヴォーカルと小気味良くテンポ外してくるバンジョーとハーモニカを使いこなしてるあたり、まるで『Looser』の時のBECK。そこに60~70年代の英国ポップの感覚が上手く潜り込んでいる。実験的ポップの良心。この子、これでもアイリッシュなんですよ。


Simple Kid.com

myspace.simplekidmusic