皆さん、歯医者が嫌いって方は多いでしょう。
それはもう仕方がないことかもしれませんね!
私そもそも歯医者って、医療分野だけれど、美容院や散髪屋と同じ部類だと思うんですよ。
歯がある限りは、虫歯や歯周病になってしまう。
そして、なってしまう限りは行かなければならない。
歯医者ってそんな、日常生活で身近な存在なはずなんですけどね。
でも、美容院と大きく違うのは、痛そうだったり血が出たりする。
つまり、リラックスしていられる場所ではないからだ!!
だから、本来は美容院と同じ部類のはずだけど、多くの方に嫌われて足を遠のかせられちゃうんだと思うんです。
そして、そうこう行くのを後伸ばしにし続けた結果、どうしても遂にやってくるんですよね、その時が・・・。
絶対に歯医者に行かなきゃならない〜!!て時が。
この記事で取り上げる患者さんも、初め実はそんなお一人でした。
歯医者が大嫌いで、虫歯だらけだというのは随分と前から承知だったが、怖くてずっと行けなかった・・・。
そして遂に、意を決して私のところを受診したという患者さんでした。
案の定、口の中は虫歯だらけ〜!!!
すっごく神経の近くまで進行した虫歯も数本ありましたが、幸いにして救いだったのは、まだ全然痛みがなかったってこと。
ならば、神経に虫歯が達してしまう前に、絶対に虫歯を食い止めなければなりません!!
ということで、虫歯の治療を開始していくことに。
こちらのレントゲンを見てください。
これは右上の奥歯ですが、一番神経に近そうな矢印の歯をはじめ、丸印のところが虫歯でした。
ムッチャクチャ神経に近いので、抜髄からの根管治療の可能性も浮上します。
しかし!幸いなことに痛みが一度も出ていない=虫歯菌はまだ神経にダメージを一切与えてない!!
そのため、神経は絶対に温存しなくては!というのが私のここでの使命。
ところでまた、この歯の根管の形態を見てください。
すっご〜くクネクネに歪んでいるでしょう?
まるで半円のループを描いているかのような、正直ありえないレベルの形態です。
こんな歪すぎる根管の形態をした根管治療を、100人の歯科医師が行ったら、果たして何人の歯科医師だけが成功の根管治療を出来るでしょうか?!
私は根管治療を得意としますが、さすがにこの状況は出来るとは断言出来ない・・・。
というわけで、余計絶対に神経の温存は必須です。
さて、慎重に虫歯の治療が始まります。
この写真を見て、まず素人さんなら、一体どこに大きな虫歯があるのか、全然わからないかもしれませんね。
いやあ〜、でもしっかり虫歯は存在するんですよ。
まず、トップのエナメル質を削ると、ほら・・・、
虫歯でヤバそうな部分、つまり、ホロホロに腐ってしまった部分が明らかですね。
こうした部分はまるで、豆腐のオカラのようにホロホロになっているので、器具で突ついただけで直ぐにほぐれてきます。
で、そうした部分を全て取り除くと、、、ちょっとこれ以上削ると、神経が露出してきそうな勢いになってきます。
この歯は絶対に神経を温存したかったので、これ以上神経に近接したところの虫歯汚染部分は削らずに、この時私はドックスベストセメント(DOC's Best Cement)を使いました。
更にその上からグラスアイオノマーセメントで神経を守るとともに、大きく失われてしまった歯を補修しました。
そして、更にその上からRestoration(インレー)を詰めて治療完了!!
治療後のレントゲンですね。
ほぼほぼに神経ギリギリのところまで、人工的なもので補填されていることが素人さん目にもわかるでしょう?
ちなみに、他の部分の虫歯も治しています。
また、反対側にも同様に、これと同じレベルの大きな虫歯と、同じやり方での虫歯治療を行いました。
写真だけ簡単に載せますね。
これも非常に神経スレスレでヤバいレベルの大きい虫歯。しかし幸いなことに痛みなし!
一見こんなんですよ〜!どこにそんな大きな虫歯があるねん?って感じでしょう。
ですが・・・
ほら、実際にあるんですよ、虫歯が!!
ちょっとこちらの虫歯は慢性化気味になってる感じですね。
とはいえ、明らかに虫歯に侵されている部分は取り除いていきます。
で、ここからは同様に、ドックスセメントで、残っているかもしれない虫歯をやっつけ、そしてその上からRestoration(インレー)を詰めました。
黄色い矢印の歯ですね。
もちろんその隣手前の歯も同様に治療しています。
そして、治療後のレントゲン写真ね。
さて、ここで私が前述した、DOC‘s Best Cement(ドックスベストセメント)。
多分、歯科治療に敏感な人なら、もうとっくに知っているでしょうね。
削らなくても虫歯が治せる!!という謳い文句で、一時期日本で流行った虫歯治療用セメント。
実は私もある時期多くの症例(特に虫歯が深い神経に近接したケース)によく多様していましたね。
ただ、このブログでは、その言葉を使っていませんでした。
なぜなら、このセメントのリサーチによるエビデンスが、ほぼない?!・・・からなんです。
ペーパーによるエビデンスや裏付けが公にないのに、なぜ医療材料として使える?!て感じでしょう?
ただ日本の歯医者では、一時期すごい勢いで普及していったようです。
なぜなら、このセメントによる虫歯治療の方法を開発したのが日本人で、そして日本で普及したからのようなんです。
歯を削らなくて済む魔法のようなセメントは、自由診療の一貫としてユニーク性を持たせて売り込むことが出来たので、それを導入する歯医者も次第に増えていきました。
さらに、日本人に独特な“流行ってるなら僕もやらなきゃ“的な波に乗せられるだけの歯医者が、あまり深く勉強もせずに導入するようになると、間違った使い方や乱用をしてしまう歯科医も逆に増えてしまい、きちんと効果の出るはずの症例も散々な結果に終わってしまうといったケースが増えたのでしょう。
するとその一方で、日本の国外の学会レベルで科学的な立証が乏しいという理由で、元々始めからこのセメントを信用していなかった臨床歯科医師も以前存在していたわけで、そうした歯医者たちは、散々な使用をされたセメント症例を目の当たりにするごとに、その信用性のないセメント治療法をさらにバッシングするようになったという現状。
その結果、今となっては、DOC‘sは一時期に比べて随分廃れてしまったのでは?・・・と思います。
それに私にとってはやはり、実際日本国外では、DOC‘sセメントが“虫歯を削らなくて済む治療法“として紹介されているのを聞いたことがない。
これはさすがに、う〜んといったところですしね。
しかし、どうなんでしょう?実際の真意のところは・・・。
歯科医療は、歯科医療材料や機材産業と密接にタグを組んだ(組まなければならない)分野。
それゆえに、そのバックにつくメーカーが権力とお金を持ったところかどうか?によって、大きく影響も受ける分野でもあるのです。
つまり、本当はこっちの方が優れた薬剤だけれども、実は、バックの出資力広告力が偉大な別の薬剤の方が、世間一般的には多く売り上げられてしまう・・・、とそんな世界だったりもする。
つまり、実際には、DOC‘sはムッチャクチャ虫歯の治療には有用なものかもしれなかったりする!!
・・・とも考えられるわけですね。
実際、私自身の感触としては、ここで紹介したケースのように、DOC‘sを使った結果、抜髄からの根管治療を5年間に渡り回避し続けることに成功しているという現状から、実は案外頼りにできるマテリアルなのではないか?
・・・という思いでもあるわけです。
5年経過良好中の、今のレントゲン写真。
いやあ〜、それにしても、あの時もし虫歯が大きすぎるからといって、抜髄→根管治療となっていたら、この患者さんのこの歯今頃どうなっていたのでしょうね・・・。
そしてまた、もしかすると、今までの経過はよくても、今後いつかは神経がダメになっちゃうかもしれない。
でも万が一そうなってしまったとしても、最低5年間は健康な歯髄を温存できた!と考えれば、この治療法は決して無意味じゃなかったと言ってもいいんじゃないかな?
もちろん、この先一生そうであって欲しいのには違いないけれど
この先も経過をモニターしていくつもりですよ。(患者さんが引き続ききてくれる限りは!!)
というわけで、ここのところ数年ご無沙汰してたDOC‘s、また使用しようかな〜?
Love & Protect Your Teeth