ちいさな、おはなし。 -76ページ目

七夕の次の日に。

トンネルの先が見えてきた。

実際には、退院してからのほうが大変である。
しかし今はそんなことはどうでもよい。
トンネルの先が見えてきたのだ。

長女の両鼻から大腸まで差し込まれていたチューブが外された。
手や背中に差し込まれていた点滴や痛み止めが外された。
ありとあらゆる異物が外された。

ヨーグルトが許され、具はないけれども「茶碗蒸し」が許され、
粉々になってはいるけれども白身魚が与えられ、
重湯が許され、
そのうちごはんつぶがかすかに見えるおかゆが許されるようになった。

壊死した部分の小腸を切り取られたのはショックだったけれど、
原因部分がないということが彼女をすっきりさせたように見える。


休暇をとった今日、病院に着くと同時に、長女は、

「パパはこのあいだいくつになったんだっけ?」

と問うてきた。

このまえの金曜日に「よんじゅうさん」になったんだよと言いながら、
彼女をワンピースに着替えさせて、髪をといた。
本人が三つ編みを希望したので看護師さんに整えてもらい、
以前から行きたかった病院の中庭へ。


チューブがなくなったその鼻から思い切り空気を吸わせた。
気持ちいい、と彼女は言う。

部屋に戻ってから観たテレビにユーミンが出てきて、歌声が流れた。
僕らにとってこの人は「稀代の天才」だけれども、
長女にとってこの人は別の表現になる。

歌声を聴いた彼女はすぐさまこう言った。

「キキのうたを作ってくれた人だ!」

キキとはむろん、宮崎アニメのあの話の主人公である。

続いてこの番組では、ライブで歌うユーミンの姿が映し出された。
たいそうな厚化粧(笑)とたいそうな衣装である。
長女はすぐさまこう言った。

「こ・・・こわいよう」(笑)

トンネルの先が見えてきた(笑)