ちいさな、おはなし。 -34ページ目

TAXI DRIVER

ものすごく急いでいたのに、道ゆくタクシーというタクシーがみーんなお客さんを乗せてる。

少々イラッとし始めたそのとき、センターライン付近に止まっていたタクシーを突然発見した。

僕は信号待ちしていた車を縫うようにしてそのタクシーのところまでツカツカ歩いていき、「乗せて」っていう合図をした。

最近増えてきた女性ドライバーであった。

僕と目が合うと、その人はなんとも絶望的な顔つきをした。

知ったことではない。こっちは急いでるし、向こうだって商売のはずだ。


すぐさま乗り込み、行き先を告げる。「靖国神社まで」。

そのあと、信じられない一言が返ってきた。

「ええ!や、靖国神社ですか???うーん、どう行くんでしょう・・・」

「運転手さん、もしかしてこの辺の人じゃないとか?」

「はい、うっかり都内まで来ちゃったんです。私、いつも埼玉を流してるので」

「(プロならなんとかしろやと思いつつ)あ、そりゃすみませんでしたね。つまり地元に帰るとこだったんですね。」

「ええ、さっきお客さんが車に近寄ってきたときに、お願いだから来ないでと思いました」

「(だったら空車のパネル出すなよと思いつつ)あ、そりゃすみませんでしたね。僕も急いでましてね。でもほら、カーナビがあるから靖国神社、分かるでしょう?」

「このカーナビ、壊れてるんです」

「(限界に達しそうな怒りをこらえつつ)あ、そうでしたか・・・え、えーとですね、しばらくここをまっすぐ行ってもらって、そうすると飯田橋の駅のほうに出ると思うので、そんで左に曲がっていただいて・・・」

「お客さん、道に詳しいんですね」

「(深呼吸をして怒りを抑えつつ)いや、たまたまです。」


超安全運転のおばさんドライバー。ゆっくりゆっくり車を走らせる。

約20分後・・・・・ようやく靖国神社到着。


「どうもありがとうございました。お気をつけて」

別れ際にそう言ったのは、客である僕だった。。。


あのおばさん、無事に浦和まで帰れたのだろうか。
また途中で誰かを乗せて、うっかり横浜あたりまで行ってたりしないだろうか。

そんなことがあった、おととしのお花見シーズンであった。