でもいきなり戦争だなんて…
急展開過ぎないか?

しかも、逃げきってみせるぜ!と意気込んだのはいいが…果たしてそんなことが可能なのか?

相手は宇宙人。
科学力も頭脳も相手のが上だし、アヤミの戦いっぷりを拝見したところ戦闘力もハンパなく高い。

苦境に立つアヤミの寝顔は決して安らか、とは言えない。

俺は指先の神経を集中させ、そっと彼女の左袖を捲った。

…。
ホント、コイツには驚かされてばかりだ。

傷口が綺麗に塞がっているではないか。

これも彼女が使う“術”のおかげか?
だとしたら羨ましい機能だな。
…相手をふっ飛ばしたりする攻撃機能はいらないが。

俺は横に預けた体を起こし、月明かりに照らされる海を眺めた。

…元カノと最後の旅行がここ、沖縄だったな。
まさかこんな形で再び訪れるとは思わなかったよ。

あの時と変わらない波の音、潮のにおい、風の音。

まだ失恋の傷が癒えていないんだ。
思い出させるなよ。

「…アキトさん?」

鼻をすする音で起きてしまったのだろう。
アヤミは俺の名前を呼んだ。

「どうしたの…?アキトさん…?」

「うるせーなぁ。地球の男は失恋に弱いんだよ。」

クスクスと小さく笑う声が聞こえる。
デリカシーのない女だ。

「あたしが慰めてあげるよ?おいで。」

「あいにく俺は青姦が嫌いでね。」

「そう?ならいいわ。おやすみなさい。」



…少し後悔してしまった自分が嫌いだ。
眠れないからちょっと昔話でもしようかな。

僕がまだ10才頃、子供会で一泊二日、山での生活を体験しにいったんだ。

夏休み真っ只中でね
とても暑かったよ。

だから僕は矢田クンという友達を誘って川に入りに行ったんだ。

山の川は尋常じゃないほど冷たくて、気持ちよくて、30分ほど泳いでいると矢田クンが

「ああ~!!!」

と川の底に沈んだんだ。

僕はよくある“溺れたフリ”だと思って、

「大丈夫か~(笑)」

ってな具合に矢田クンの元に泳ぎ寄った。

「ぶはっ…たす…けっ…ぶはっ…」

様子がおかしい。

「矢田クン!?」

僕は矢田クンを助けようと手を差し出した

…が

「上ちゃ~ん!ここにデッカい魚がいるよ~!」

僕の遠い後ろで大きく手を振る“もう一人の矢田クン”がいたんだ。

「え?なんで?」

前を振り返ると…
…誰もいない。

僕は矢田クンの元へ行き

「さっきあっちの方で溺れかけてなかった?」

と尋ねると

「え?俺ずっとここにいたよ?」









あの時、溺れかけたもう一人の矢田クンの手を握っていたら僕はどうなっていたんだろう。
川の底に引きずり込まれてたのかなぁ…



あぁ~怖い。
余計寝れなくなっちゃったよ。
朝起きて、お墓参りにいった後、喫茶店のアイスティを片手に新聞の見出しを見て僕は絶句した。

クレヨンしんちゃんの作者、臼井さんが遺体で発見。

嘘だ。嘘だ。
うわ~嫌だよ

僕の青春が音楽だとすれば、
僕の幼年期はアニメ、漫画なんだ。

臼井さん、僕はあなたの作品が大好きでした。
PTAが悪影響だ!
ってほざいていたけど

それでも僕は大好きでした。

アクション仮面、ブリブリ左右衛門、
あなたが死んでも僕のヒーローはヒーローであり続ける。

ひろし、みさえ、しんちゃん、ひまわり、
あなたの作品は僕の中で生き続けるんだ。