【PickUP@シネマ洋画】『硫黄島からの手紙』 | U-NEXT [ユーネクスト]

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8月15日が何の日かを知らない人も増えているという話を聞いたことがありますが…ちゃんと毎年、1945年のこの日のことに想いを馳せたいものですね。今日は、ある小さな島での1944~45年を描いた作品をピックアップします。クリント・イーストウッド監督作、アカデミー賞では4部門で候補になり(1部門受賞)、ゴールデン・グローブ賞では外国語映画賞を受賞した、

『硫黄島からの手紙』です。


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$WATCH!U-NEXT[ユーネクスト]-硫黄島からの手紙



1944年、日本本土防衛の重要拠点である硫黄島。そこに派兵されている西郷(二宮和也)ら日本兵たちは、暑さと水不足、食料不足という過酷な環境での肉外労働のうえに、上官からの体罰に苦しんでいた。そんな時、新たな指揮官として中将・栗林(渡辺謙)が着任する。アメリカ留学経験を持ち、その軍事力に理解の深い栗林は、日本軍に蔓延する精神論を脱却し、進歩的な方法でアメリカを迎え撃つ準備を始めるのだが…。

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渡辺謙さんが演じる栗林中将は実在の人物で、この映画は彼が家族に宛てた手紙をまとめた『「玉砕総指揮官」の絵手紙』が原案。しかし、ドキュメンタリーではありません。硫黄島の環境を考えても、実際の戦いはもっと凄惨なものであったでしょうし、史実と異なる描写もあるでしょう。

しかし、エンターテイメント作品として観たとしても、この一歩引いた、あくまで自然な、視点の定めかた。圧巻です。


この作品は、彼らを英雄視することもなく、声高に反戦を叫ぶこともありません。極限の状況で、彼らはどんな生きかたを、あるいはどんな死にかたを選ぶのか。あくまで人間たち一人ひとりの振る舞いを、静かに見つめ続けるのです。

それにより浮き彫りにされる、等身大の日本兵たちの想い。しんどいと愚痴と言う。家族を想い、手紙を書く。いっそ投降するかどうか、いつも葛藤している。ギリギリの状況で、実家同士が近い同胞に「帰ったら遊びに来いよ」と声をかける。

そんなひとつひとつのシーンから、じわっと伝わってくること。玉砕した軍隊の軍人さんというと、自分とはまったく異なる精神構造を持った、恐れ知らず強い人間であったかのように錯覚してしまいますが、彼らの想いは現代を生きる私たちとなんら変わらないのです。

その心情を丁寧に丁寧に描き出したのが、アメリカ人であるクリント・イーストウッドであることには、何度この映画を見返しても驚いてしまいます。

確かに映像の質感はハリウッドらしい手触りもあるのですが、“人間を描く”という点において、文化の壁どころか、この作品の舞台における敵味方の壁をやすやすと越えています。この事実が、とりもなおさず無くならない戦争の無意味さを象徴しているようにも思えます。

ラストシーン、渡辺謙さん演じる栗林の最期のセリフ。そして、二宮さん演じる西郷の目に映る夕陽の鮮やかさ。胸に迫ります。

硫黄島はもちろん、様々な戦場でこういう人たちが生きて死に、そしてその一人ひとりに家族や大切な人たちがいた。今日はそのことに想いを馳せたいものです。

ぜひご覧頂きたい作品です。


番組表<シネマ洋画>
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