今回発生した排水問題を突き詰めていくと、分岐点になったポイントが二つあります。

一つ目は、「事前の調査で河川放流の選択肢が検討されなかったこと」。

二つ目は、「道路側溝へ放流する工事の申請が通ってしまったこと」です。


そもそも、事前の調査で放流先を道路側溝へするか、河川にするかと問われれば、間違いなく河川を選択しています。

近隣の方々が皆さん河川に放流していますし、道路側溝へ放流すれば農業用水への影響を懸念した地元の方との関係悪化が想定されますから、当然です。

そして、河川への放流が条件的に不可能なのであれば、そもそもこの土地で家を建てようとしなかったに違いないのです。


また、仮に調査でそれを拾えなかったとしても、申請時点でその問題に気づくことができれば、その時点で止めることもできました。

その場合、経済的にも、時間的にも、最小限の損失で事態を収束できたはずです。


もっと言えば、問題発生後の一連のBESS富士の動きの悪さが原因で、対応が遅れたことも挙げられますが、そこは前述の二つのポイントの責任の所在次第で変わる話でもあるので、一旦保留するべきでしょう。

ですから、まずは、その二つのポイントについて、実態がどうなっていて、その実態に問題がなかったのか、を調べました。


まずは1つ目のポイントである、調査に関してです。

調査についてのBESS富士の主張・説明は

「自分たちの調査に問題はない」
「道路側溝がある場合、側溝への放流が第一優先で、側溝への放流の許可が下りなかった場合にのみ、河川への放流という選択肢が出てくる」
「行政が道路側溝への放流を拒否してくれなければ、河川放流はありえない」
「よって、調査段階で河川放流が検討に挙がることはない」

と言うものでした。

説明された当初、無知だった私は素直に

「そういうものなのかな」
「何かの法令とかで決まっていることなんだな」

と思っていたのですが、関連する法令をどれだけ調べても、そんな記載は見当たりませんでした。


関連する法規で放流先の優先順に触れているものとしては、『静岡県浄化槽取扱指導要綱』があります。

これは、浄化槽法施行に関連して静岡県が定めた要綱ですが、この要綱によると浄化槽を通した放流先については、

「放流先は、環境衛生上支障なく、かつ浄化槽の放流水が停滞することなく流れる排水路又は河川等であること。 
  ただし、適当な放流先がなく、やむを得ず放流水を地下浸透させるときにあって、次により生活環境の保全及び公衆衛生上支障がないよう措置するときは、この限りでない。」
  
とあります。

つまり、排水路と河川の優先順は同列であって、BESS富士が主張する様に「道路側溝が第一優先」ではありません。

ちなみに、下水道が整備されている地域であれば話は別です。

下水道が整備されているのであれば、第一優先は下水道ですから、道路側溝が下水道へ接続されていれば道路側溝が第一優先になります。

ですが、建築中の土地は下水道が整備されていない地域です。

下水道がないから浄化槽を設置して浄化した水を放流するのであって、その場合は道路側溝が第一優先にはならないのです。


私がBESS富士の営業に「道路側溝が第一優先」という説明の法規的根拠を確認すると、

「根拠はありません」
「単に道路側溝があったので道路側溝で進めました」

と回答してきました。

根拠がない?

根拠がないのに、それが如何にも正当である様な説明をしていたの?

話をすればするほど、BESSへの不信感は強まるばかりでした。


BESS富士の説明に問題があったのは確かですが、それだけでBESS富士の調査が不十分だったことを主張するのは弱いと思いました。

より重要なのは、優先順では同列の道路側溝と河川とで、放流先をどう選択するのが正しいのか、ということだからです。

これについては、「藤枝市開発許可技術的指導基準」に記載がありました。

この基準は、都市計画法に基づく開発許可制度の運用にあたって、藤枝市が開発者向けに定めている基準ということになります。


この基準には、

事前調査について「排水施設の管理者及び水利権者に関する事項」
そして、排水施設計画について、「接続することとなる水路又は河川の管理者、利水権者等と協議すること」

という記載があります。

つまり、開発者であるBESS富士は、道路側溝へ放流するのであれば、その道路側溝の管理者と水利権者について調査をする必要があるはずです。

ですが、BESS富士は

「苦情を受けて初めて道路側溝が農業用水へつながることを把握した」

と言っていることから、BESS富士の調査がこの基準を満たしていないことは明らかです。

調査で漏れていたのだから、当然、「利水権者等と協議」も出来ていません。


この技術基準を満たした調査がなされていれば、道路側溝の水利権者である近隣の農家について確認できていたはずです。

そして、「利水権者等と協議」していれば、当然、今回の問題は事前に判明していたはずなのです。

BESS富士は、調査、手続きにおいて、行政が定めた基準を満たしていません。


二つ目のポイントである「道路側溝へ放流する工事の申請が通ってしまったこと」についても、この技術基準を満たしていないことが原因だと説明できます。

BESS富士は

「悪いのは許可を出した市だ」
「部農会長からも工事の許可を受けている」

と言うのですが、それは責任転嫁にしか思えません。

この技術基準は開発者であるBESS富士が満たすべき基準であって、近隣住民や行政に求められているものではないはずです。

「工事の許可をもらっている」と言っても、説明不十分で協議していないのでは、何について許可を得たのか、という話になります。


BESS富士は、行政が定めた基準を満たさず、

「自分たちの調査、手続きに問題はない」
「自分たちには責任はない」

と主張しています。

そんなことが許されるのでしょうか。



BESS富士と取り交わした契約書には、施工基準について

「工事にあたり、建築基準法、同施行令、その他の建築関係法令(建設省告示、国土交通省告示を含む)を遵守する」

とはっきり書かれています。

繰り返しになりますが、「藤枝市開発許可技術的指導基準」は、都市計画法に基づき国土交通省が告示している開発許可制度の運用にあたって、藤枝市が開発者向けに定めている基準です。


それでも、本当にBESSに問題はないと言えるのでしょうか。

私には、そうは思えません。

 

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