いつも

ご来訪いただきありがとうございます。

今日のエデンはお休みです。

この物語の序章は残すところあと2話程で一旦終了します。

その後は別の物語を連載しようと思いますので宜しければまた来て下さい。

宜しくお願いします。

最上は末氏を見下ろしながら、この先の覚悟を胸に刻み込む思いで彼の最期を見届けるのだった。

“このような輩にエデンは渡せない! 例え天界が見捨てようとも、このエデンは人間達のものだ!”

 全ての遺体を、七海がその魔力で一瞬のうちに火葬する。

 藤堂が水鏡の結界に手を伸ばす最上を呼び止めた。

「義兄上様、私がやります」

 最上は片膝を着いてひたすら待った。

彼女は水鏡の結界に手を翳して、外側から解除を試みると、暫くして結界は消え、脱力した水鏡の身体が最上に倒れ込んで来た。身体を揺すろうとした最上の肩に、藤堂が両手を添える。

「大丈夫です。気を失っているだけ。じきに目が覚めるものと存じます」

 最上が大きな溜息をつく。彼女はどの程度覚醒したのだろう。記憶まで戻っているのだろうか。敵か、味方か。

“あの優しい水鏡が、親人派で無い訳が無い…いや、違ったとしても……”

 最上は決して裏切らない水鏡の暖かい身体を背負って出口を目指した。

「まさか…本当に……え、エルヴァンティスか! 戦王(せんのう)エルヴァンティス!!」

 悲鳴に近い声を上げてうろたえる末氏を見据えた最上は、右手に法印を出現させながら再び口を開いた。

「よくしゃべったな…」

 スッキリしただろう? というような口調だった。じりじりと歩み寄る間に、また一人胴体を吹き飛ばして倒れる少年。悲鳴を上げ、口から血を噴き出していた。

「では死ね」

 狼狽しきった敵勢に視線を向けた最上は、魔界への精神的論理回路を開いた。散れ! と誰かが叫ぶ。

 脳裏に蘇った法印を強く念じて、最上はまるで忍術でも唱えるかのように、胸の前で立て続けに印を組む。すると白光線の幾何学的な模様が手元に幾重にも出現した。それがフラッシュした次の瞬間、法印は霧散し、突如縦横に走る白い閃光の嵐が目前で吹き荒れた。

 よく映画などで、防犯用の赤外線センサーが網状に張られている映像がある。最上の魔力は白い閃熱のセンサーで、丁度それを一瞬現したようなものであった。

 かわしきれなかった者の防御結界を破壊して、彼等を射抜くと、その身体は白く瞬き、その一瞬で塵となって消し飛んでいった。

末氏の張った結界も、怒れる最上の前に瞬時弾け飛び、魔力をかわし損ねた胴体の一部を吹き飛ばされて、よもや彼も絶命寸前であった。

「結界など張らねば楽に死ねたものをな…」

 最上がそう言って歩みより水鏡の結界の傍に立った。

「ヴァ…テイン、様に……ほ、報、告……を」

最上の魔法をかわした眼鏡、四角、顎鬚の三人が末氏に頷き、一箇所に寄り集まると中央の一人が法印を発現する。とたんにその足元から水が噴き出して三人を隠し、水と共に退却した。

「ガフッ! 貴、様…が……ま、魔王…」

 最後、大量に吐血した末氏はそこで絶命した。