最上は末氏を見下ろしながら、この先の覚悟を胸に刻み込む思いで彼の最期を見届けるのだった。

“このような輩にエデンは渡せない! 例え天界が見捨てようとも、このエデンは人間達のものだ!”

 全ての遺体を、七海がその魔力で一瞬のうちに火葬する。

 藤堂が水鏡の結界に手を伸ばす最上を呼び止めた。

「義兄上様、私がやります」

 最上は片膝を着いてひたすら待った。

彼女は水鏡の結界に手を翳して、外側から解除を試みると、暫くして結界は消え、脱力した水鏡の身体が最上に倒れ込んで来た。身体を揺すろうとした最上の肩に、藤堂が両手を添える。

「大丈夫です。気を失っているだけ。じきに目が覚めるものと存じます」

 最上が大きな溜息をつく。彼女はどの程度覚醒したのだろう。記憶まで戻っているのだろうか。敵か、味方か。

“あの優しい水鏡が、親人派で無い訳が無い…いや、違ったとしても……”

 最上は決して裏切らない水鏡の暖かい身体を背負って出口を目指した。