「……」最上は迷っていた。最初に花見を口にしたのは七海だ。しかし、ここへ来てずっと変だった。
「ほら、あれだよ。地上八階地下四階、立体駐車場。元々有料だったらしいんだけど、今は廃墟かな。取り壊されてもいないし、立入禁止でもないみたい。珍しいよね」水鏡は指を差して、その駐車場を示した。彼女は、一旦説明を区切ってその廃墟を見上げてから更に続けた。「ここ、車両通行止めだからね。皆あそこに止めるんでしょ? 違うの?」
「いや、そうじゃない? 駅から近いし、無料だし便利よね」と霧小路が言った。
「最上くーん。鞘ちゃんが、入ってったのかなー?」藤堂はついに一人で片付けたたこ焼きの容器を、設置されたごみ箱へ捨てて戻って来た。
「駐車場か…あそこへ入っていったのは二人だけだな」最上は七海の消えた路地へ向かって歩き出した。
「? 人数の事か? いや、そんな事は無いだろう。現にこうしている間にも出入りは若干あるし…」後を追う岩見の言葉を制して最上はついてくる級友達にこう続けた。
「だが高校生は二人だけだ」
「高校生?…」水鏡が相槌を打った。
「…まあ、確かに変よね。駐車場に用のある高校生…って?」霧小路は、水鏡を振り返ってそんな疑問を口にする。
「て? って聞かれても…何だろうな…悪い事する…人…達…とか…?」
水鏡がたどたどしくそう言いながら、辺りを見回す。皆、予感している事は一緒なのかも知れない。
「…これか」
御柳が硬く握った拳を皆の前に翳(かざ)して見せた。