「貴方達も? ったくうちもだよ。こんなんで本当に行けるのかな全国なんて…」
霧小路は頭から水を浴びたようで、水浸しの顔をタオルで拭っていた。
「わーい! 皆で桜祭りぃー!!」
膝を曲げてガッツポーズの藤堂に微笑む水鏡。七海はカラカラと笑った。御柳が「何がわーい…」と左手で額を覆う。
「仕方ない。折角だから俺達も行くか」岩見が最上を見て言ったので
「俺達もそんな話をしてたところだ」と最上は答えた。
「よし、そうするか!」と御柳も乗ってくる。
「OK! 着替えてくる」霧小路が荷物を持って出て行った。
賑わう繁華街を抜け、駅郊内を通り反対側に出ると、桜通りはそこにあった。綺麗で洒落た町並みに小物ショップ、ブティック、インテリアショップ、カフェテラス、レストランやショットバー等が立ち並ぶ地元の人気デートスポットに桜が枝を張っている。自動車の通行が禁じられている歩行者専用の道。その石畳の中央に、等間隔で立っている桜は満開であった。今日明日ばかりはこの洒落た町並みも、出店でいっぱいだろう。辺りの高校生達も鳳凰高校に限らず楽しんでいるようだった。
七人は花吹雪の中をゆっくり歩いていた。岩見と御柳は相変わらずサッカー談議である。後ろでは、先程まで藤堂が習っているという少林寺拳法の話で盛り上がっていた水鏡と霧小路がとうとう「綺麗ね…」しか言わなくなっていたし、その隣には藤堂がたこ焼きの入ったプラスチック容器を手に、やはり「おいしー」しか言わなくなっていた。
だが七海は違う。先程から険しい表情で、視線だけを周囲に配って何かを強く警戒しているようだった。あの獣の様な眼が、辺りを獰猛(どうもう)に射抜いているのが分かる。
それだけではない。先程から周囲に何か感じる。良くは分からなかったが、何やら鼓動と言ったら良いのか。心臓を握り潰すような圧力のようなものが脈打つのを感じる…ような気がするのである。その波動のようなものは左に並んで歩く七海からも強く感じていた。それは共鳴するように、最上の身体の中に、何かのうねりを感じさせていた。最上は気にせずにはいられなかった。
散々躊躇った挙句、声をかけようかと思ったその時だった。