今日は、今年最初のちょっとイイ話・・・以前拙ブログでご紹介した『1日1話 読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』(↓)より、
1月3日分として掲載されている、元劇団四季芸術総監督・浅利慶太氏(1933-2018)の言葉をご紹介致します。
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要は自分の生き様ですよ。
自分の生き様を正せば、その人の話を聞いて貞ッてくれるんですね。
それを「こうやって育てよう」と技術論ばかりに終始する。
植物だって殆ど自生で、ちょっと整えるだけでしょう。
学校も家庭も社会全体が、あまりにも技術的に捉え過ぎると思います。
僕は防空壕の中で縮こまりながら生きてきた年代です。
終戦の年は中学1年生で戦後の大混乱期です。
育てられたという意識はないし、時代の激動に対応して自分が必死になって生きてきて、育ってきたという感じですね。
だから四季での僕の指導はまさに体当たりですよ。
思ったこともズバズバ言うし。
ただ、基本だけはみっちり教育する。
ヤンキースの松井秀喜選手も、見ていると基本通りにやっていますよ。
アメリカに言ってバッティングの基本をもう一度、自分の身体に叩きこんでいるのでしょうね。
あのくらいのプロフェッショナル一番必要なのは、やはり基本なんです。
演劇でもそれができていない子供は伸びない。
ただ好きなだけという子は、稽古が辛くなるとすぐに辞めてしまいます。
伸びるのは、逆に根性を持って自分の夢を実現しようとするタイプでしょう。
僕はオーディションの時に 「10年間辛抱できますか?」 と質問します。
誰もが「できる」と答える。
でも、実際は1年以内に多くの子が辞めて行ってしまいます。
俳優とは人それぞれで伸びるテンポが違うので、自分だけの時計を持たないといけないんです。
ところが「私はなぜあの人のようになれないのだろう」とついつい他人の時計を覗いて、自分を見失ってしまうんですね。
逆に、不器用でも10~15年やっていると自然にテクニックが身に付いて上手くなっていくものです。
二枚目でなくても声も今一つで、身体能力も高くなくて、あるのは根性だけという子でも、10年地道にやると結構いいバイプレーヤーになります。
しかも器用でない分苦労し、人格的に深みが出てくる。
ですから、訓練に耐える力も、じっと待つことが出来る力も、芝居を愛し続ける資質も全て才能なんです。
先日も新入団員たちを前に話をしたんですが、
「君たちはいままで公平に扱われる社会で育ってきた。
だが、これからは違う。
四季の敷居をまたいだ途端に不公平な社会に入ったんだ。
競争社会の中でこれからは扱われるんだ」 と。
僕は何でも育ててやるという戦後教育の公平感は間違いだと思うし、それは恐るべきことですよ。
社会環境が豊か過ぎるのも良い事ばかりではない。
優しい環境を与えてやれば人が育つというのは誤解ではないでしょうか。
「好きなだけの子は伸びない」という話とは、いささか矛盾するようですが、「好きこそものの上手なれ」 という言葉もあるくらいで、やはり情熱でしょうね。
情熱を持った人間が何かを創り出して行く。
あるいは狂熱と言ってもいいかもしれません。
不可能と思われることでも、それに執着する強い情熱ですね。
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この言葉を情熱的に語る浅利氏の姿が、目に浮かぶようです。