法曹養成制度検討会議の最終取りまとめが発表されました。
http://www.moj.go.jp/content/000112068.pdf良い機会なので、この「取りまとめ」に突っ込みを入れる形で、
自分の考えをまとめとこうと思います。
長いので、暇な修了生か、よっぽど興味ある人だけ読んでもらえればと思います
『はじめに』わが国における法曹の役割は,それまでの行政優位の体制から市場重視へ,更には政治主導へという,統治構造全体の大きな変化の相の下に理解されなければならない。そんな大きな話だったんですね。
恥ずかしながら、初めて知りましたww
そんなに大きな変化は5年、10年で結果出るわけない。
50年、100年たってから、意義が見出されるか、失敗の歴史として研究対象になるのかどっちかでしょ。
とりあえず、自分は乗っかります。
第1 法曹有資格者の活動領域の在り方【感想】
・分科会に分けて検討を進めるのはよい
・で、各分科会はいつまでに何やるの?
『はじめに』で掲げている政策方針からして、法曹有資格者の活動領域拡大が最も重要な課題であることは間違いないんだろうと思います。
にしては、あまりに悠長な感じがします。
今のような検討会議の体制では、議論の重点が「法曹養成」いわば『供給』に偏らざるを得ないんだと思います。
『需要』を拡大する作業は、各分野の人間と法曹関係者で構成する別組織で展開し、そこで生まれた需要を見ながら『供給』のあり方を現在の検討会の枠組みで議論するのが良いと思います。
「和田委員意見書」には、実質10年間で法曹需要なんて全然増えてないじゃないという指摘があります。
でも、現在はまだモデルケースの仕込みに着手したという段階でしかないと思っているので、それで需要増えてないといわれても、そりゃそうでしょとしか言いようがないと思います。
実感として感じられるようになるまでに10年、インパクトのある数字が出るのに更に10年ぐらいかかるんじゃないでしょうか。
第2 今後の法曹人口の在り方【感想】
・中途半端やけど、やむをえんやろうなぁ
『需要』の拡大が、上のようにぼんやりしたものである以上、『供給』の数もぼんやりせざるを得ないと思います。
現時点での需要と供給のバランスや、OJTの対応を考えると1000人と明記すべきだとの意見もありうると思います。
けど、受験生側からすると、それって結局入り口狭めただけで、なりたい職に就けないという人の数は減らないんじゃないの? という気がします。
第3―1 法曹養成制度の理念と現状【感想】
・プロセスとしての法科大学院維持は賛成
・法曹志願者減少に対する危機感は伝わる
・貸与制維持はやむを得ない
私自身は旧制度の良し悪しをよく知りません。
でも、法科大学院がなければ、自分が法曹を目指すことはなかっただろうし、3年間で法律の知識・思考を今ほど身につけることはできなかっただろうと思います。
なので、法曹の多様性を維持するために、法科大学院は必須だと思ってます。
貸与制については、いろいろ意見はあると思いますが、私は、自分のキャリア形成のための自分への投資は、自分でリスクを負うのがむしろ普通のことだと思っています。
三権を担う一角としての司法養成という意義を重視すべきとの意見もその理念は理解はできるのですが、現状の司法試験や修習制度を維持する限りどうもしっくりこないというのが、正直なところです。
法曹志願者減少について、時間的負担と経済的負担が重いということは確かに法曹を目指すのを思いとどまる理由です。
特に、未修入学だと実質5年近く教育に時間を費やすことになるので、相当の思い切りか、無鉄砲さが必要なんだろうと思います。
それでも、やっぱり法律のプロとなるからには、これぐらいの時間がかかるのは仕方がないと思いますし、そのためにはお金がかかるのもある程度止むをえないと思います。
また、リスクはあってもその大きさをちゃんと計算できるなら、リスクを負う選択をする人は一定数いるはずです。
そして、リスクの計算を難しくしているのは修習後の収入が安定するかという問題です。
なので、結局は法曹の活動領域を広げられるかどうか、「かっこいい」とあこがれるような法曹有資格者のモデルケースをどれだけ拡散できるかにかかっていると思います。
第3―2 法科大学院について【感想】
・法科大学院修了者の司法試験合格率として7、8割を目標とするのは結構
・統廃合に干渉するのは大きなお世話
・未修者向け「共通到達度確認試験」は余計なお世話
私自身は、「充実した」教育内容と評価されているだろう法科大学院に通っていたので、正直、「教育の質」の問題というのがピンときません。
法科大学院での教育の質を担保しなければ、プロセスとしての法曹養成がままならないということで、カリキュラムや修了要件に口を挟むのはやむを得ないのかもしれません。
ただ、統廃合にまで国が積極的に干渉する必要があるのかは疑問です。
司法試験の合格率が低迷する法科大学院に学生が集まらないのは当然だし、学生もその合格率を覚悟した上で入学してるんだから、国が合格率を全体として保障する必要はないんじゃなの?? という気がします。
「共通到達度確認試験」は、純粋未修者からすればほんとに余計なお世話です。
純粋未修者が1年間で学部4年分の法律知識を万遍なく身に着けることはほとんど不可能だといっていいと思います。
純粋未修者で一発で合格できる人は、1年次に必要な知識で追いついた人ではなく、その時々をごまかしながら、計画的に3年かけて帳尻をあわせられる人です。
ところが、「共通到達度確認試験」が1年次の2月か3月に行われることで、ごまかせたはずの人まで、ごまかせなくなる可能性があります。
あるいは少なくとも、計画が大きく狂わされます・・。
現実的にも、1年次の学習はこの「共通到達確認試験」をパスすることに力が注がれ、結果として効率を求めて、考えない、論証や知識を暗記するだけの勉強に走る人が相当数増えるでしょう。
学生は、自分の法科大学院の未修者の合格率がいくらかなんて十分に知ってるし、知った上で、必死に勉強する人もいれば、さぼっちゃう人もいる。
必死でやったやつは合格するし、さぼっちゃったら合格できない。
国が後ろからケツたたいて、プレッシャーをかける必要は全くないんですよ
第3―3 司法試験について【感想】
・5年制限はあるべき。受験回数はどっちでもいい
・民訴、刑訴の短答はあった方がいいと思う
・選択科目を廃止する前に、選択科目を受験したことが、実務でどの程度役に
たっているのかをちゃんと検証して欲しい
・予備試験をなくす必要はないし、飛び級もさっさとやればいい
法科大学院にいると、法曹人になることしか見えなくなってきます。
社会人出身者の目からみると、正直、
「法曹にこだわるのをやめて、一旦社会に出てみればいいのに」
と思う人にもたまに出会います。
自分は、今年落ちてたらそれで終わりと思ってます。
更に1年を勉強につぎ込む気持ちはないです。
それは、社会人として1年間にできる成長の大きさを見てきたからです。
なので、正直、5年でも長いんではないかと思っています。
受験生の負担を全体的に減らすという方針は理解できます。
ただ、訴訟法科目は、知識として大事なんだけど論文には出ないよなという部分が結構あると思うので、短答から削るのは反対です。
選択科目については、なんともいえません。
科目を減らすなら、行政法を選択に入れればいいという人もいますし。
個人的には、その分野に興味をもって、専門的に取り組むきっかけになるので選択科目を完全に司法試験から外すことには躊躇を覚えます。
予備試験については、実質的に法学部生のバイパスになっていて、本来の目的を果たしてないなどの批判があります。
しかし、法科大学院修了程度の法律知識と思考力を持っている学部生が、わざわざ成長盛りの2年間を費やして、法科大学院に進学する必要はないでしょう。
予備試験の受験者が多いのは、受験資格が制限されていないのと、法曹資格取得までの時間と費用を削減できるからなので、法科大学院への飛び級を認めれば、本気で勉強している人の相当数がこっちに流れると思います。
予備試験を否定したり、受験資格を制限するということの理由は、採点が大変だということ以外に思いつきません。
また、予備試験に合格したからといって、みんなが司法試験に合格できるだけの、いわゆる「法的思考力」を身につけられるわけではないということは、今後、徐々に数字に現れてくるというのが持論です。
なので、法科大学院不要論もいずれ消沈すると見込んでます。
「司法修習」については、体験してないのでなんともです。
法曹養成制度の改革に乗っかって、この道に来た人間ですから、
基本的にこの取りまとめの方向にあまり違和感はありません。
法曹の活動領域の拡大のとこだけは、もっと本腰いれて欲しいです。
あと、パブコメやって何か意味あったのかは疑問です