第六話 下界へ ③
天界の入り口では、鏡を抜ける儀式の準備一切を、
桜の姉、菊姫が仕切っていた。
12人の選ばれた者たちに、天王から天界の約束事が書かれた白い封筒と
もう一通の赤い封筒に入った手紙を、最後に渡して鏡を通り抜けさせる役目である。
固く封がされた赤い封筒には、それぞれの術とアイテムが書かれている。
封筒の中には、もう一つ、名前の刻まれた石が入っている。
忘れてはならない大切な自分の名前である。
そして母霊(母の母胎にやどりし時に母霊という霊。)
の入った身代わり玉、、。
これを忘れてしまうと、天界には戻れないのである。
言わば天界の通行玉である。
忘れ薬を飲んだ、桜達一行は、
鏡に向かって小走りで走っていた。
「桜、、俺のこと覚えているよね。ねえ、、
桜、、
。」
ボカッ、、「イテェ
」
無言で殴る桜の方を見てまあくんは
(桜は覚えてる、、)
「ヤッター、、。」
後ろからその口を塞いだのが、石ちゃんである。
「シッ、だから、、
しゃべらないの
」
(石ちゃんも記憶有り)
まあくんは心の中でガッツポースをした。
「はーい、皆さんこちらですよー
。」
菊姫の大きな声で
皆は整列。
初めて見る下界へつづく鏡の前で、
なにやら、ちょいとトラブルが発生している
。
「まあくんが先に行けばいいじゃん。」
「桜が行けよ、、。」
互いに背中を押し合っている。
「男のくせに意気地がないんだから、、
もう、、
これからが思いやられるわ、、
行こう石ちゃん。
馬鹿をほっといて、、
。」
「な、、、馬鹿とはなんだよ、、
(桜はもう一発殴ろうと、、、した)
わかったから、、
行くよ
俺が行けばいいんでしょ
」
「はいどうぞ、、、
どうぞ、、、
」
「んーはめられた、、、
」
一番はじめは、まあくんが鏡を通り抜けることになった。
菊姫は皆の先導役にまあくんを、
きちんと鏡を抜けられるどうか、
一人、ひとりの背中を押す係を、石ちゃんに任せた。
「桜は少し待って、、」
「桜、、お先―
」
次々と菊姫から貰い受けた、赤い封筒を胸元に終い、
一行は鏡を通り抜けに成功した。
「ねえ、、いっせいのせじゃないの
」
水の妖精使いのレイだけが、
石ちゃんの励ましをよそに、駄々をこねている。
「わかった、、わかった、、私の背中におぶさりなさい。」
優しく石ちゃんは、レイをおぶった。
「じゃあ、、先に行くね、、
」
「レイを頼むね
。」
桜は、ひとり残されたが、それには意味があった、、
菊姫からかんざしを渡された。
「桜、よくお聞きなさい、、これは、お母さんから、
大きくなったら渡してと、頼まれたものなの。
おまえのお団子頭に似合うようにと、
銀色に光る龍の髭で、
丸い水晶玉を巻かれているでしょ、
何か起きた時の身代わりになるようにと、
念を入れてつくられたかんざしですよ。きっと
下界でお母さんを探す時に役に立つから持っていきなさい。」
「わーきれいね、、
ありがとう
お姉ちゃん。
」
その時。
天界に入り込んだ、
蜘蛛の軍団の
かげが、、、。
つづく、、。
かこまれたかにや
、、、