心の処方箋。今日も誰かが傷んだ心でやってくる。 | 心の処方箋

心の処方箋

日々、笑っていられますように…。なぜ私は生まれたの。何の為に…。

同じ時おなじ時間に、それぞれの時が流れる。

大切な時間の使い方を、、。

人は、人になるために生まれてきた、、。

そして、あなたは今、、、?

観玉堂

 

 壁の中の女達

 

 京子

 

彼女の名前は京子。

 

色白の彼女は長い黒髪を後ろでひとつに束ねていた。

 

塀の中のカウンセリングルームに小さな声が響いた。

 

「外はクリスマスですね。クリスマスツリー、クリスマスソング、恋人たち。

 

 ホワイトクリスマスですね。凄く冷え込んで。私、クリスマス嫌いなんです。」

 

下を向いた彼女は、唇をかみしめた。

 

罪状 殺人未遂 懲役8年10ヵ月。

 

町は、クリスマスイヴで、恋人たちのにぎやかな足跡が、

 

いつしか降り始めた雪にけされていた。

 

犯行現場は、都心のマンションの一室。

 

鋭い刃物で、刺された男女は、離れ離れで、倒れていた。

 

管理人が、悲鳴を聞いて駆け付けた時には、

 

アイスピックを右手ににぎり、返り血を浴びたまま、放心状態で立っていた。

 

男女二人は、病院に搬送。

 

一命は取り止めた。

 

 

京子はゆっくり話し始めた。

 

「私の中には、子供のころから鬼が棲んでいるんです。

 

小さな時一緒に遊ぶ二人の姉妹がいました。

 

ふたりとも家は貧しく、色の黒い、汚い子でした。

 

私の家は、父がいい暮らしをさせてくれていて、何も不自由はありませんでした。

 

俗にいうお嬢様ですよ。

 

おまけに一人っ子で、欲しいものはなんでも手に入ったんです。

 

その姉妹は、私といつもお姫様ごっこをしたんです。

 

お姫様のいうことは、召使役のふたりは何でも聞かなければなりません。

 

ある日遊んでいた空き地の白い壁に落書きがありました。

 

それを、消すのが、召使の役目でした。

 

命令は私。たわしとバケツの水で消すのです。

 

二人の少女は、消しつづけました。

 

やっと終わりましたと言われた時には、服も靴もびしょびしょでした。

 

ご褒美は、家から持って来た、リンゴひとつ。

 

心の中で、壁をこする二人を見て、憎らしくなるんです。

 

なぜ、りんごひとつでこんな風に必死になるんだろうって。

 

今になると、りんごどうぞってなんで言わないで、お姫様ごっこをしていたんだろうって。

 

命令を聞くのは対価のため、、、。

 

 

あの日も、彼が私の友達の子をクリスマスイヴに、一人はかわいそうだからって、

 

家に呼んだんです。彼の友達も一緒に、、、。でも、彼の友達は来なかった。

 

はじめは、楽しく過ごしていたんです。

 

次第に酔っぱらい始めた彼女は、彼にくっつき始めたんです。

 

酔っぱらっているからと、大目に見ていたんですが、彼女喋り始めたんです。

 

3年前から、彼と付き合い始めていたこと。私は、彼と婚約していました。

 

友達だったんです彼女は、、、。彼女は、私の言うことはほとんど聞いてくれていました。

 

なぜかって?私、彼女の欲しいもの何でも買ってあげてましたから、、、。

 

だんだん大声になってきた彼女は、すごく興奮していました。

 

そのうち、彼女が何を言ってるか、だんだんわからなくなってきました。

 

でも、彼の一言で、スイッチが入っちゃったんです。

 

「彼女とも婚約するつもりなんだ、、、。」彼女の高笑いが聞こえました。

 

気がついたとき、目の前のアイスピックで、私は彼を刺していました。

 

それでも笑っている彼女も、刺してやりました。

 

反省?してませんよ。だって、死んでないんですよね、、、、。」

 

 

机に頬杖を突いたまま、窓の方を眺めた。

 

いつしか、窓の外は激しく吹雪j始めた、、、。

 

彼女のお腹は、妊娠八か月になっていた。

 

獄中出産はまれにあることである。

 

心の処方箋、まずは眠れるようにと、処方いたしましょう。!!