心の処方箋。今日も傷んだ心でやってくる。心の方程式解いてみようか、、、。 | 心の処方箋

心の処方箋

日々、笑っていられますように…。なぜ私は生まれたの。何の為に…。

同じ時おなじ時間に、それぞれの時が流れる。

大切な時間の使い方を、、。

人は、人になるために生まれてきた、、。

そして、あなたは今、、、?

 

観玉堂 

 

「こんばんわ お邪魔します。」!!

 

玄関が開くと、一瞬誰だかわからない美しい女性が立っていた。

 

彼女とは、5年前に出会った。

 

そこは、女子更生施設のカウンセリングルームでの

 

対面カウンセリングの時でした。見違えるほど美しくなった姿がまぶしい。

 

 

調書には、

 

罪状は、「覚せい剤取締法違反」と書かれていた。

 

務めていたBARでお客に薬の密売をしていた。

 

判決は、5年8ヵ月。重い刑期である。

 

BARの常連客が覚せい剤中毒で3人死んでいる。

 

彼女は一切の反論は一言もせず、全てを認めた。

 

彼女の父親は、雷の鳴る晩に、トラックに跳ねられて事故死している。

 

父親は、腕のいい大工だった。

 

足が自慢の母親は、父親の死後、ナイトクラブのダンサーになった。

 

いつしか、生活も荒み、毎晩、男を家に連れ込み、

 

ふたりはいつもベランダの角で眠った。

 

とうとう、母親は何日も戻らず、

 

食べるものもなくなり、電気もガスも切られ、

 

弟にパンを一つ、食べさせたかった。

 

それが初めての犯罪だった。

 

意識がモウロウトなっていくとき、児童施設の人がドアを開けた。

 

一度も施設には顔を見せたことのなかった母親は、

 

施設を出てすぐに、酔っぱらって川に落ちて死んだと連絡された。

 

父親の死は、事故死ではないと長い間疑っていた。

 

父親の死ぬ前の晩黒い服の男たちと、大声で喧嘩をしている声が聞こえてた記憶。

 

大金を受け取る、受け取らないの口論だった。幼い彼女の目に一度も声を荒げたりする

 

父親ではなかったのに、その日は背中を丸めた父親の姿を見たのが最後だった。

 

何かの談合での理不尽な頼みに、激怒したことは、大人になってから理解した。

 

犯行に及ぶきっかけは、務めたクラブの一席だった。

 

席に着いたときの顔触れは、どこかで見た顔ばかりだった。

 

窓から、雷の鳴る音がした。

 

「何年前だったかな、大工の親父が受けてくれていたら、あのブツは、あのまま

大金に変わっていたのになあ。親父は気の毒だったな。あの日もこんな雷の晩だったぜ」

 

鳥肌が立った。聞き覚えのある声だ。

 

誰も頼らず生きると決めた、意志の強い彼女の計画はその時から始まった。

 

 

カウンセリングルームに入ってきた彼女は、痩せた身体で、

 

赤茶けた髪と黒髪がツートンカラーになり、長い取り調べと拘留された時間を物語っていた。

 

椅子に静かに腰かけた。名前は冬子。

 

やつれているが、瞳の奥にある、全て終わった強い意志のような光が気になった。

 

「早く出る方法を教えます。聞いたことに、正直に答えてください。」

 

「・・・・。」  私の目をじっとまっすぐに見た。

 

45分の時間彼女が言った言葉は、

 

「雷が嫌いなんです。」その一言だけだった。

 

 

秋の日差しの中、好きだという、熱いコーヒーをのも終えた時

 

重い口を開いた。

 

「私、、仏門に入るんです。」

 

彼女の瞳からは優しく悲しい光と、強い意志が感じられた。

 

「もう、雷は怖くないですね。」

 

大きくうなずく彼女の顔は優しい瞳が光っていた。

 

人は大切な人のために犯罪を犯す。

 

 

 

観玉堂にようこそ、心の傷の処方箋少し多めに書きましょう。

望み叶えたまえ。ラブラブ