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このブログは洗足音楽大学の授業 How to Improvise の予習復習用に書いております。履修学生の方に特化した内容ですので、御理解の上お楽しみください。


「リズム・チェンジ」とは?

 

ジャズ・ミュージシャン達がセッションでよく使うコード進行です。(ブルースのように)

 

George Gershwinの「I Got Rhythm」が語源です。

 

ジャズ・ミュージシャンは「コード進行」 のことを「Changes」と言います。

 

「コード・チェンジ」ってな感じで・・・

 

「I Got Rhythm」 のコード進行(Changes) を略して、通称リズム・チェンジというわけです。

 

今回はリズム・チェンジとチャーリー・パーカーのお話です。

 

キラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラ


リズム・チェンジのコード進行

 


リズムチェンジのコード進行には数多くのヴァリエーションがあります。

 

それは又後ほど紹介します。

 

あしあとあしあとあしあとあしあとあしあとあしあとあしあとあしあとあしあと

 

ジャズ・ミュージシャンはこのコード進行を使って様々なメロディを作りました。

ジョージ・ガーシュインの
「アイ・ガット・リズム」


デューク・エリントンの
「コットン・テイル」

 

 

ベニー・グッドマン

「セブン・カム・イレブン」


チャーリー・パーカーの
「アンソロポロジー」


「デスクタリティ」


「ムースザ・ムーチェ」


マイルス・デイビスの
「ザ・テーマ」

ソニー・ロリンズの
「オレオ」


これら同じコード進行に基づいて作られています。(リハモもあります)

リズム・チェンジはブルースと共にジャム・セッションで演奏する、代表的な楽曲(コード進行)で、このコード進行で、いかにクリエイティブな演奏ができるか?ってなことが夜な夜な争われたりします。

 

リズム・チェンジはある意味大リーグ・アドリブ養成ギブスなのです。(例が古くてごめん!)

リズム・チェンジは必ず元に戻ってくるループ進行(俗に循環コード進行と言う)で、調性を表す最も基本的な進行です。それに基づいて作られたフレーズは、ひとつのコードの上で演奏されている(一発もの)フレーズといってもいいのです。従っていろんな状況で使える便利なフレーズが作れます。

 

と、言う訳で、この授業の2回目の課題はリズム・チェンジです。

 

上差しそれでは、リズム・チェンジのフレーズを作ってみましょう。

 

先ずは書きソロのウォーミング・アップとして4分音符の書きソロを作ってみましょう。

 

ここで、前回までの授業の内容が役立ちます。

 

第6回コードトーン

第7回7−3の法則&テトラトニック

第8回アプローチ・ノート

 
これらを参考にしてどんどん書きソロを作ってくださいね!

 

 ルンルンルンルンルンルンルンルンルンルン

 

ここでは先ず、

 

各コードに2音づつ(2拍づつ)音を当てはめてください。

 

使う音は

コード・トーン=CT
パッシング・トーン=PT
テトラ・トニック=TT
アプローチ・ノートA=N

なるべくスムースに〜

ネイバー・トーン(コードが変わる時になるべく近くに)等を思い出して〜

 

 

 

 

次の4分音符のみで作ったRhythm Change(書きソロ)はどんな音を使ってるかアナライズしてみよう。

 

 

 

4分音符を使って簡単な書きソロを使うことに慣れてきたら・・・

 

 

上差し8分音符!行ってみましょ〜〜〜

 

 

コード・トーン、
7−3の法則、
テトラトニック、
アプローチノート

 

等を

効果的に使う為には練習が必要です。

初めは上手く行きませんがコツを掴めば大丈夫です。

ゆっくり考えながら書きソロを作る練習をしましょう。

書きソロ=時間を止めて考える事は、アドリブと言う「作曲行為」のクオリティを上げる為に必須の練習法です。

 

時間を止めても出来ない事は、それはもう絶対出来ないのです。

あしあとあしあとあしあとあしあとあしあと

 

EX4では我慢できずに?リハモを使ってしまいました。

 

リハモナイズ自体は後の授業でもう少し深掘りをしますが、ここではリズムチェンジのリハモと、それを使った書きソロを紹介します。

 

 

リハモ その1「パッシング・ディミニッシュを使ったリハモ」

(授業内で詳しい解説します)

 

 

リハモ その2「SUBⅤ(裏コード)を使ったリハモ」

 

 

リハモ その3「セロニアス・モンクのリハモ」

 

リハモ その4「ジョン・コルトレーンのリハモ」



まだまだ面白いリハモはたくさんあります。

 

上記の8小節はリズム・チェンジのAの部分ですが、リズムチェンジのBの部分はとてもユニークな進行です。

 

それでは、サビ(Brige)の部分の解説もいたしましょう〜

 

B(サビ)の進行は・・・

 

 

セカンダリー・ドミナントの連続で元のキー(B♭)に戻ってきます。

ドミナント7thコードが2小節も続く進行なのでコード・トーンを使ってなんとかしよう〜っと言っても、2小節間「ドミソ、ドミソシ、ドミソ、ドミソシ、・・・」ってそんなのかっこわるくてやってられね〜〜〜

というご意見も・・・

あしあとあしあとあしあとあしあとあしあと

 

そこで、ここでは特別にドミナント7のコード・スケールをちらりと紹介します。

 

コード・スケールのお話は最後のクール(第11回以降)にお話をしますのでご安心を。

 

リズムチェンジのサビ(Brige)の考え方

 

 

Dominant 7thのコード・スケール

 

上記のスケールをリズムチェンジのサビに当てはめてみましょう。

 

リズム・チェンジのブリッジのコード・スケール

 

Mixolydian

 

Alterd

 

Lydian♭7

 

Diminished Scale(HW=半全) 俗にコンビネーション・オブ・ディミニッシュ

 

 これらのスケールは全て違ったキャラクターを持っていますので、それを利用してアウトっぽくしたり可愛くしたり?するのです。

 

 

上差し各コードスケールを使ってサビを作ってみた

 

Mixolydianを使って作ってみた(爽やか)

 

Alterdを使って作ってみた(怪しげ)

 

Lydian♭7を使って作ってみた(割と爽やか)

 

Diminished(HW=半全)使って作ってみた(かなり怪しげ)

 

上記のコード・スケールはもちろんランダムに使用しても、どのように並べても良いのです。

 

 

4種類混ぜてみたーその1

 

4種類混ぜてみたーその2

 

 等工夫次第でトラデショナルにもコンテンポラリーにもなりますので、リズム・チェンジは誠にアドリブの練習にいいですね。

 

リズム・チェンジに対してどのように音を当てはめるかというお話はひとまずこのくらいにして・・・

 

ビバップのリズムに関して少し触れておきましょう。

 

あしあとあしあとあしあとあしあとあしあと

 

チャーリー・パーカー(as)1920年8月29日 - 1955年3月12日(34歳没)

 



チャーリー・パーカーの残したジャズにおける最大の功績はハーモニーとリズムのフュージョン(融合)です。

もちろん彼一人だけでは無く1940年代のビ・バップというジャンルで活躍した数々のミュージシャン達の功績です。

 

ビ・バップという音楽はスイング時代のジャズとは違い、メロディの譜割がとても複雑になっています。

 

ただ単に難しくなっているのではなく、メロディの中にリズム・セクションの要素が含まれているところが特徴なのです。

 

リズムを研究する為にチャーリー・パーカー残した数々の「テーマ」を分析する事は大変意義のある事だと思います。

 

あしあとあしあとあしあとあしあとあしあと


彼が残した作品達はその同時代に生きたミュージシャン達の曲とはベクトルが全然違います。

 

まず彼の曲の一番の特徴は「カオス」です。
混沌・混乱、無秩序という意味の単語。読みはケイオス (Chaos, Khaos) 。


上差しチャーリー・パーカーの曲はビックリするほどカオスです。リズムの秩序を乱しまくっています。

リズムの秩序とは何か?それはバーライン(小節線)の事です。

 

バーラインとはその曲の拍子を線で区切ったもので、4/4拍子ならば4拍づつ(4分音符4つ)4/3拍子ならば3拍づつ(4分音符3つ)


と、皆さんご存知の例のやつ・・・


パーカーの曲のメロディには小節が無いのです…(ある意味)滝汗

 

キラキラキラキラキラキラキラキラキラキラ


上差し次に上げる2曲はパーカーと同時代に活躍した、オスカー・ペティフォード(b)ミルト・ジャクソン(vib)のブルースです。


Blues in the Closet
by Oscar Pettiford
譜例1
$『道』Blog


Bugs Groove
by Milt Jackson
譜例2 
$『道』Blog

ね?わかりやすいでしょう〜
4小節のフレーズを3回繰り返しているだけです。

小節という箱を利用しているのです…

 

 

口笛この世の中にある数多の曲は殆どが最初の2小節、4小節又は8小節のリズムの形、音程、コード等、なんらかの要素を繰り返して出来ており、

 

そうしないと、曲に聴こえないし覚えられないし覚えて貰えないと儲からないのです。

 

 

右差しここでパーカーのブルース"
 

Relaxin' at Camarillo"を見てみましょう。

$『道』Blog

まずはジーッとこの譜面を見つめてください

 

そしてリズムに注目してください…

 

何が見えますか…?

 

 

虫めがね虫めがね虫めがね虫めがね虫めがね

 

 

 

ポーンそうです!この曲の中には、同じリズムを持った小節がひとつも有りません。

 

12小節全部違います…

 

なんと言うことでしょう!

 

でたらめに弾いてもひとつくらい同じリズムになるもんです。

 

みなさんが知ってる曲の中に、メロディのリズム(モチーフ)が一度も繰り返す事なく成立している曲はどのくらいありますか?(少し考えてください)

 

?何故、これで曲として成立するのか?

 

パーカーさんが計算によって12小節全て異なるリズムになるように配置したのか?

 

天才的閃きで結果的にこうなったのか?

 

それは、わかりません・・・

 

しかし全く繰り返しの無いメロディにもかかわらず、めちゃ楽しい、しかも覚えやすい?曲に作り上げるセンスは脱帽です!

 


口笛作曲とは?

 

簡単に言えば繰り返しの事です(乱暴ですが)

 

譜例1.2で紹介した2曲は小節内にあるリズムのモチーフが必ず同じ形で他の場所にも現れてきます。

 

リズムのコピペです。

 

小節内で完結したリズムでないと同じ形でコピペ出来ませんので、バーライン毎に区切られたメロディなのです。

 

ゲッソリそれに対して、パーカーさんのメロディはすべてにおいてバーラインを跨いでいます。小節内で完結するリズムがひとつもありません。

 

ポーンモチーフを使って、覚え易いメロディを作らないと人々に覚えて貰えないから売れないんじゃなかったけ?

 

作曲の基本を無視しちゃってます(ケロッ)

 

キョロキョロパーカーさんの同世代の代表的ミュージシャンにディジー・ガレスピー、バド・パウエル、セロニアス・モンク達がいます。

 

彼等の作品もずば抜けたインパクトでパーカーさんと才能の隔たり等あろうはずもありませんが、事リズムのアイデアに関してパーカーさんのそれは異才を放ちまくっています。

 

よくまぁ、こんな変テコな曲ばかり作って有名になれたな〜と、ひとしきり呆れた後、もう少しチャーリーさんの秘密に迫ってみましょう。

 

 

 

滝汗それでは何故?パーカーさんは小節を無視して滅茶くちゃ(カオス)にしているのだろうか?


彼は小節を別の方法で利用しているのです。

 

それは、小節をわざと曖昧にする事に寄って醸し出される「ある効果」がポイントです。

 

音楽を聴くとき我々は嫌でも拍子を感じながら聴いてしまいます。例え現代音楽を聴く時もなんとなく拍子を探したりするものです。

 

ジャズがリズムの音楽と言われる所以はそこにあります。アクセントが複雑に入れば入る程、聴いている人はより強くリズムを感じようとする、ということです。

 

見えない物を見ようとする…

 

猿「サピエンス全史」は正しかったと言うことでしょうか?

 

 

照れかつてのニューオリンズジャズや、1620〜30年代のダンスミュージックは同じリズムを繰り返す事で、踊りやすく、覚えやすいメリットがあるのに対して、パーカーさんは覚えやすいというメリットを取り去るというリスク?を背負ってまで?ビートを説明しなかったのです!?


ガーン天邪鬼なのです!

 

彼の性格が後世の音楽に多大な迷惑と芸術を残してくれた、と言うことは紛れもない事実です。

 

パーカーさんがどう言う経緯でこのようなリズムのアイデアを得て自分の血肉にしていったのか、我々の知る由も無いのですが、ジャズのみに留まらずその後の音楽に与えたディープ・インパクトは未だ色褪せる事はありません。

 

口笛How to improvise で紹介しているのは音の使い方やフレーズの作り方の方が多目になっていますが、リズムの考え方などの情報は今のところ少な目です。

 

上差しここらで一度、チャーリー・パーカーのオリジナル曲を聴いて、そして研究してみて下さい。リズムマジシャンのアイデアを彼の作品からどんどん盗みましょう!

 

キラキラキラキラキラキラキラキラキラキラ

 

チャーリー・パーカーのリズムをパクリンコしてみよう〜

 

Confirmationのリズムを使ってリズムチェンジを作ってみた

 

パーカーさんのおすすめリズム推薦曲はこちら〜

 

Cheryl

Anthropology

Au Privave

Confirmation

Moose the Mooch

Ornithology

Scrapple from the Apple

Blues for Alice

Chi Chi

Dewey Squar

Dexterity

Barbados

Perhaps

 

and many others 

 

私もお世話になったこの本、サックスの教本ではなく、リズムとハーモニーをどうやって結合させるか?と言う作曲法の本だと思います。

興味がある方は是非ご一読を。

 

 

 

それでは、来週の課題を〜〜〜〜

 

リズム・チェンジの「テーマ」又は「アドリブ」を作ってください。

 

提出期限 6月18日(日曜日23時59分)

提出場所Google Class内「リズム・チェンジ課題提出」

課題発表6月19日(月曜日2限)楽器持参

 

コード進行はこちらです。(楽譜はプリントアウトして使っても構いません)

 

提出物には必ず名前と学籍番号を書いてください。