このブログは洗足音楽大学の授業How to Improvise の予習復習用に書いています。履修学生の方に特化した内容ですので、御理解の上お楽しみください。
今回はアプローチ・ノート〜です!
ジャズの「音使い」に関する要素で最もジャズっぽいキャラを持つテクニックが「アプローチ・ノート」です。
コード・トーン・ソロイングが「ピコピコ」ならばアプローチ・ノートは「クネクネ」です。
ジャズっぽいメロディは次の3つの要素+リズムによって出来ています(特にBeBop以降)
*コード・トーン
*アプローチ・ノート
*スケール
論より証拠、我らのヒーロー、パーカー先生のフレーズを見てみましょう’!
譜例1)
ビリーズバウンスのソロ
A.N =アプローチノート
T.N =ターゲットノート
C.T=コードトーン
見事に3つの要素が配分されています。
アプローチ・ノートは「楽器」によってやりやすさとかニュアンス(表情)の付け方に違いがありますので、自分の楽器の技術的練習法としても役立つと思います。
特にトランペットはクロマチックのパッセージがやりやすい楽器構造から半音を上手く使った面白いフレーズの演奏を聞く事が出来ます。
などを聴いてみてください。
今回記事で取り上げるテクニックは「クロマチック」アプローチ・ノートです。
アプローチ・ノートは通常(クラシック音楽では)下から半音、上からはダイアトニックパッシング・トーンとなっています。
が、しかし、本記事のクロマチック・アプローチ・ノートは上から下から同じ半音でシンプルで理解しやすいので、ここからスタートすると良いと思います。
クロマチック・アプローチ・ノートの基本ルール
譜例2)12種類のクロマチック・アプローチ・ノート
半音上から半音下から=シングル・クロマチック・アプローチ
それを両方使ってターゲットを挟み込む=サンドイッチ(私が命名)
半音2個=ダブル・クロマチック・アプローチ
これらをコード・トーンに対してアプライすることによってジャズ特有のクネクネした、ジャズ・サウンドが生まれてきます。
セロニアス・モンクの「ストレート・ノーチェイサー」「ブルー・モンク」「エピストロフィー」等はクロマチック・アプローチ・ノートのキャラクターを生かした名曲です。
「半音」と言うのは不安定な音です。特にコード・トーンの上下にある半音を弾くと「頼むから半音下がって(上がって)解決してくれー!」となります。
不安定な音を使って緊張と緩和を作り出す・・・
ビバップのソロ・フレーズは次の「ターゲット・ノート」を想定して、それに向かって「解決」する、といったフレーズが多数あります。
「緊張と緩和」「不安定から安定へ」それは解決した時の安心感を出すためで、そういった意味では、極論ですが、楽曲内の全て音は最後の音への壮大なアプローチ・ノートと言えます。
クロマチック・スケールとアプローチ・ノート
ここで一つ整理しておきましょう・・・
世間ではクロマチック・スケールという謎の名前で恐れられていますが、
半音階は調性の中ではアプローチ・ノートと言う名前で活躍しています。
半音とは短2度ですが、濁り度マックスの音程で
コードの内声に短2度をぶつけると明らかにヤバイです。
しかし、その音を隣の音に移動するとコード・トーンの邪魔をしなくなるので違和感が解消されてホッとします
密を避ける訳ですね・・・
調性 (key) がある曲の中に出現する全ての音は、
必ずそのキー又はコードに対して機能的に働きます。
そう言った意味では、12音全ての音が何らかの意味を持って使用する事が出来る、という事です。
見てください↓
クロマチック・スケール
先ずはそのまま弾いて(部分的でもいいよ)ください 。
キモいでしょ?
次は、Cトライアドを鳴らしながら、上記のスケールをゆ~~っくりと弾いてみてください。
どんな感じがしますか?
コード無しで弾いた時は全部均等に聞こえた12音が、コードを鳴らしたとたん
気持ち悪くなったり安心したりしませんか?
これは正に「緊張(Tension)と緩和(Resolve)」です。
和声(又は調性)の上でクロマチック・スケールを弾くと、どうしてもアプローチ・ノートに聞こえます。
これを利用してかっこ良く?するのであります
練習法を2つ紹介します。
アプローチ・ノート・エクササイズの作り方あれこれ
その1
「アプローチ・ノートとターゲット・ノート」
Ex1)各コード・トーンをターゲットにしてシングル・アプローチ・ノートを加える
(ついでにアンティシペーション[anticipation]の練習〜)
(注)テンションをターゲットにすると気持ち悪いかもですがそう言う時はコードと一緒に弾いてみてください・・・
ルートから13thまでの7種のコード・トーンに対して前述の12種類のアプローチを適応すると、7x12で84個出来るという事です。
練習問題
次の進行で12種類の中から任意のアプローチを各コードのR,3,5....に対して当てはめてみよう!
その1)
その2)
その3)
ターゲットに解決した時の「心地よさ」を耳に馴染ませましょう〜
その2
「コード・トーンとアプローチ・ノート!」
1つのコードにたいして2つのターゲット・ノートを決めます(コード・トーン)
その2つはコード・トーン1.3.5の中から2つピックアップします(7,9,11,13は今はNG)
そしてそのコード・トーンに対して12種類のアプローチノートをあてはめて行きましょう。
先ずは楽譜に書いてから練習してください。このエクササイズを始めから頭の中で作るのは大変です。
コードトーンの中から2つの音を取り出して、それに対して12種類のアプローチ・ノートを当てはめていきます。
(何故2音なのか?・・・は後程出てくるリズムチェンジの時に詳しく説明します)
緊張→緩和→緊張→緩和…を感じますか?クロマチック・アプローチ・ノートはコードトーンやスケールに無い音がどんどん出てきます。それらは明らかに違和感のある音なのです。
ある意味「アウト」ですね・・・
クロマチックの危ないサウンドに耳を慣らせることがこの練習法の目的です。
ピアノの場合は左手でコードを押さえながら、その他コード楽器ではない方はまず最初にルートの音を演奏してからアプローチノートのエクササイズをやってみてください。
重要ポイント!
ターゲット(コードトーン)は「強拍」に置いてください(その事に関してはこちらの記事も参考になります)
そうする事によってコードサウンドが明確になり、コード進行と「シンクロ」している実感が高まります。
強拍とは1&3(4拍子)です。1のみターゲットで後はアプローチノートというのも可能です。
逆に?解りにくくしたり、ズレたリズムを演出したいときはそれ以外の所にターゲットを置けばいいのです。
実際の曲に当てはめてみましょう!
Ex8)4.4m〜Just Friends All of Me 等
Ex9)1.6.2.5リズムチェンジ
Ex10)1.6.2.51小節づつ
アプローチ・ノートを入れるマテリアルはいろんな物が考えられます。
トライアド
スケール
インターバル
etc
何に対してアプローチするか?
いろんなケースを考えよう~
トライアドにアプローチノートを入れたエクササイズ(1)
トライアドにアプローチノートを入れたエクササイズ(2)
インターバルにアプローチノートを入れたエクササイズ(1)
インターバルにアプローチノートを入れたエクササイズ(2)
ダイアトニック・トライアドを利用したアプローチ・エクササイズ
ETC・・・・
緊張→緩和→緊張→緩和→緊張→緩和→緊張→緩和→
を感じますでしょうか?
ジャズのアドリブは頭の体操です(ある意味)
ゲームの様な物といってもいいでしょう。
ルールを学んで練習する、そして楽しむ・・・
今日のお題であるアプローチノートテクニックも、
その中の一つとして紹介しました。
こちらの方にモット突っ込んだアプローチノートの記事がありますので興味のある方はどうぞ。
自由課題
指定されたターゲットに
アプローチノートで
フレーズを作ってみよう!
コード進行はこちら
Ex10)
符頭無しの部分にアプローチ・ノートを入れてフレーズを完成させてください。
今回の授業の音はこちらで聞けます。
それではみなさんHave a nice day~