大河ドラマの解説コーナー⑫ #どうする家康 | わんわん物語

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~異界から目薬~

だんだん遅れていきますが、3月26日の「氏真」の回の分です。

1ヶ月開いてしまった。。。

5月になればちょっと余裕出るのでがんばって追いつきたいと思います。

 

掛川城攻防の回ですね。

西は徳川軍に浜松まで落とされ、東は武田軍に駿府は落とされ、残る今川の領地は遠江の東側のみ。

 

遠江東側の拠点は掛川城ですが、北の山側の城も同時に徳川軍の攻撃が始まり、掛川城も多数の砦を築かれて包囲。

今川が滅びるのも時間の問題、と思われてたところだけども、掛川城が落ちない。

 

ドラマでは家康と氏真を兄弟のように描き、兄弟のように育った二人の確執を演出していたわけですが。。。

 

まずはじめに、冒頭で「天野、葛山、朝比奈、重臣は皆武田に裏切り・・・」と岡部さんが言っていましたが、ここで言ってた朝比奈さんは駿河に拠点をしていた方の朝比奈氏で朝比奈信置さんです。

信置の「信」は信玄からもらった字なので当時の名前は元長です。

 

一方、掛川の城主は朝比奈泰朝で、この人が氏真を最後まで守ります。

ドラマで頑なに出してもらえなかった人ですが。

 

朝比奈氏は駿河朝比奈と掛川朝比奈がいまして、武田へと裏切ったのが駿河朝比奈、最後まで氏真を守ったのが掛川朝比奈です。

 

で、朝比奈泰朝。

朝比奈備中と書いてあったり朝比奈弥太郎と書いてあったりしますが、今川家中での信頼度はかつての家康以上です。

朝比奈氏自体が駿河朝比奈氏と合わせてそれまでの戦で功績がでかいこともありますが、朝比奈泰朝は桶狭間の戦いの際にも家康が丸根砦攻めを任されたのと同時攻撃の鷲津砦攻めを任されております。

 

家康の方が丸根攻めで激戦をしてボロボロになって大高城で休息を命じられたのと同様に鷲津攻めの方も激戦で、城兵が全滅するまで戦い続ける戦で朝比奈軍も大打撃を受けます。

 

家康の方はその後の桶狭間の戦いで義元が戦死した後の動きがわかっていますが、泰朝の方は不明です。

おそらく桶狭間の本戦には参加しておらず、その後は浜松在番を奥平氏と交代しているので負傷して何年か休養していたように思えます。

 

家康が挙兵してからは徳川軍と戦ってましたが、最後に掛川城に籠もって抗戦していたところ、駿河を追われた氏真がやってきて共に戦い、開城後は共に小田原に向かうという、最後まで氏真に従った忠臣でした。

 

小田原に行った後の泰朝の消息はわからなくなりますが、子の泰勝(こちらも通称は弥太郎)が氏真に従ったようで、長篠の戦いに氏真と共に出陣し、武田四名臣の内藤昌豊を討ち取るという大手柄を立てます。

内藤昌豊を討ち取った説のある人は複数いるので確定はできないけど。

 

という感じで、氏真を泰朝をペアにして物語ができてしまうくらいの人なんだけども、全く大河に出て来なかったのは残念です。

 

氏真と、朝比奈弥太郎親子、妻の早川殿の4人で大名今川氏の滅亡を乗り越え、徳川幕府高家として再興への道を歩む物語、これで大河できるべや。

 

掛川城については、先月行ってきてインスタに載せたので写真はそちらをご覧くだされ。

 

 

この城、ドラマでやってたCGはちょっと盛り過ぎだと思った。

現在の形になるのは功名が辻の主人公、後の土佐藩主山内一豊が魔改造してからで、恐らく今川所有当時はもっと簡単な平山城だったと思います。

 

平山城と言っても周囲の地形は平地で東海道城の要衝ではあっても険阻な土地ではありません。

平地の中にある小高い丘のようなところに、他の今川の城の技術と同じならば柵と土塁等の防衛施設があるだけの城。

 

これを最初力攻めして落とせず、周囲に砦を築いて包囲、半年間落とせず、それどころか逆に砦を落とされたりして、和睦して開城という、徳川軍の城攻め下手くそエピソードになる城です。

 

援軍のアテは無く、かつていた重臣たちも裏切り四面楚歌、と思いきや、一人だけ援軍が現れます。

 

信長に滅ぼされた美濃の斎藤家臣、日根野備中。

 

「麒麟が来る」では1回「日根野!」って名前を呼ばれただけのキャラ。

斎藤義龍が斎藤道三を裏切った時に弟2人を斬殺する役の人。

 

この人がなぜか滅びかけの今川の掛川城にやってきて徳川軍と戦うのです。

 

城から出撃して徳川軍の砦を落としたのもこの人です。

 

開城後は長島一向一揆に参加して織田軍に抗戦、2万人皆殺しの中を生き延びて、なぜか信長の馬廻衆(親衛隊)になり、本能寺の変も近くにいたのに脱出、気づいたら大名になってて関ケ原ではどっちにもつかなかったけど息子が東軍で、自分は西軍にはついてなかったけど誘いの手紙もらっちゃったから切腹、切腹してから西軍からの手紙処分してなかったことに気づいて死ぬ前にちゃんと処分して、切腹した翌日に死亡っていうよくわかんないけど凄い人です。

 

資料館にある戦国時代の丸い形の兜は日根野頭形と名前が書いてありますが、これは鉄砲対策に日根野さんが考案した形の兜だそうな。

 

突然やってくるさすらいの猛将なのでドラマには出しにくいんだろうけど、出て欲しかったな。

 

さて、本題の氏真の話をしましょう。

戦国板では「戦国のファンタジスタ」と言われるほど蹴鞠のインパクトが強い人物ですが、蹴鞠を貴族の遊びと侮るなかれ。

 

去年の大河でも蹴鞠を通じて朝廷を繋がりを持つシーンはたくさんありましたが、戦国時代でも同様でした。

 

氏真は飛鳥井流宗家の飛鳥井雅綱に蹴鞠を師事し、まあ、全国大会とか無いからどのくらいのレベルかはわからないんだけど、「氏真の蹴鞠は凄い!」との評判が近隣諸国に鳴り響くくらいになり、現在ではもはや氏真は蹴鞠の人という誤解をされるレベルになりました。

 

と、この話は氏真は武将としてはダメだけど文芸は凄いんだよっていう話ではありません。

 

この蹴鞠が日本史を変えるのです。

 

小田原の北条氏の元に身を寄せた氏真と早川殿。

あ、早川殿はドラマでは糸っていう名前で出てきたけど本名は不明です。

そして、wikiを見る感じでは、北条氏康と今川氏親の娘との子なので氏真とは従兄弟です。

 

当初は北条氏政(北条氏当主、早川殿の兄弟)は氏真夫婦を手厚く保護していましたが、新潟から関東まで定期的に攻めてくる上杉謙信に対して武田と共同で対抗する流れになり、武田と敵対していた今川氏真が邪魔になってきました。

 

そこで、氏真と早川殿は小田原を脱出。

そして、なんと今川を滅ぼした家康の元に行くのです。

 

このあたりはドラマでやってくれるかわからないけど。

 

徳川に身を寄せると、状況は押し寄せる武田の脅威と、度重なる援軍要請に応じてくれない織田信長。

そこに、織田信長から文が届きます。

 

「蹴鞠を見せて」と。

 

織田信長は困っていました。

朝廷をうまく利用したくて自分が好きな相撲大会を開催して公家を招いてるんだけど、どうもウケが良くない。

 

朝廷も困っていました。

がんがん勢力を伸ばす信長に官位を与えて飼いならしたいのに信長は受けてくれない。

 

双方歩み寄りたいのにそれができないのは、お互いに簡単に相手の要望を受け入れてしまっては舐められるからだ。

 

そこで蹴鞠の名手として呼ばれた今川氏真。

ミッションは超絶テクニックを見せて信長と朝廷を繋ぐこと。

 

父親の仇である信長に手を貸すのは、それによって織田と武田の同盟を切り、徳川に援軍を出させるため。

 

これが大成功に終わり、織田の援軍を得た家康は長篠の戦いで武田軍を撃破するのである。

 

と、最近ラノベばっかり読んでるからそんな風に書いてみましたが、氏真の蹴鞠が信長と朝廷の関係を大きく前進させたことは間違い無く、氏真は蹴鞠だけのボンクラではなくそれを政治利用し、しかも親の仇、家の仇という間柄を乗り越えて生き残る術に使う有能な人物であったのです。

 

最近の研究では氏真の人物像に大幅な上方修正がされているし、ゲームでの能力値も上がっていますね。

 

なお、剣術も塚原卜伝に学んだと言われていて、氏真の剣術エピソードは知らないけど一般的な武将と比べて軟弱すぎってことは無かったと思われます。

 

ちなみに、個人的には氏真は「戦国のリア充」だと思ってるし勝ち組だと思っています。

 

大名としての家こそ滅んでしまったけど、北(武田)と西(徳川)から挟み撃ちされつつ、義元の死から9年も今川家を存続させ、その後は妻の手を取っての逃避行、仇の元に身を寄せて利用し、もう一方の仇である武田に打撃を与え、京都で隠棲する穏やかな日々をゲット。

 

家康が幕府を開くと品川に屋敷をもらい、家康と長話をしながら余生を過ごし、慶長18年(1613年)に早川殿を看取り、その翌年、豊臣家の滅亡まで見届けて死去。

生きてる間かどうかはわからないけど孫が高家として取り立てられ、今川は再興を果たしたのであった。

 

負けたけど、勝ち組じゃね?

そしてリア充じゃね?

 

爆発したのは信長と武田氏だけど。

 

そういうキャラだと思って氏真を見ると、たくさんのドラマや小説で登場する氏真が違って見えてなかなか面白いのです。

 

掛川で氏真を助命した家康の心中も興味深いし、まあ、氏真がいる本丸まで攻め込んで助命は意味不明だしそこに捕らえた早川殿連れてくるのもフィクションなんだけど、掛川戦に1話使ってくれたのは良かったと思います。

 

次回は武田が攻めてくる・・・と思いきや上洛するのね。

 

早めに書けるようにがんばります。

 

次回もお楽しみに!