hashi
風邪がこじれて外に出られないので、
ネットでホリエモン疑獄事件(?)をチェック。

「ほらみろ、付け上がるからだ!ザマミロ♪」
・・・などと、僻みオヤジたちの快哉が
記事から聞こえてきそうで、なぜか不愉快に。
ホリエモンは、ろくでなしだろーけど、
偉そうに批判してるオヤジたちは甲斐性なしでは?

・・・なんて一人ブツブツ言っていると熱が出てきた。
買い置きの食料もないし、ミネラルウォーターも尽きた。
部屋にあるのはノド飴と都こんぶと、
★アブソルート・ラズベリー・ウォツカ(23ドル)のみ。
昨夜は、風邪薬とビタミン剤をウォッカで飲んだけど、
こんなことしていたら、のたれ死ぬかも・・・。

弱気になり、得意のスタイル(=パジャマの上にコート)で
よろよろと近くのチャイニーズ・デリへ。
★エッグドロップスープ(3ドル)
要するに中華風かき卵汁を頼む。
食べられるかどうか不明だが、チャーハンもついでに。
★シャンハイ・フライドライス(5ドル)

ぼーっとしつつ、兄ちゃんが包んでくれるのを待っていると、
つんつんつん、と誰かが肩をつつく。
「???」
ボロっちい黒スーツ&でか鼻の、50過ぎと思しき白人男が
悲しい犬みたいな眼差しで佇んでいる。

「なんでしょうか?」
・・・あ~、熱あるときに英語喋りたくないよ、と思いつつ、つい聞く。
「ワタシには コドモが オリマス」
ノラ編集者といい勝負の、かなり下手な英語。
子供がいる、と見知らぬ男に唐突に言われても、答えようがないのだが、
つい「ふぁいん」などと返してしまう。
すると悲しい犬男は、小さな紙切れを指し示しながら、おもむろに演説を始めた。

・・・ワタシは ルーマニアから 来た ホームレスです。
世の中とは トテモ きびしい ものです。
冬は とくべつ きびしい ものです。
シゴトを探していますが 見つからず オナカをすかせた コドモがいます。
つきましては なにか 恵んで くれませんか?

新聞によると、ニューヨークには4000世帯のホームレスがいるらしい。
(今年はぐっと増えたそう。世帯ってのは、なんか違和感あるが)

個人的には、残飯をあさったり、日雇いをたまにやったりするホームレスは
ひとつの生き方だと思うし、尊重する。
どうしようもなくてホームレスになる人だっているだろう。

だが、もしも自分自身が、
A)泥棒 B)売春婦 C)乞食
三つのうちのどれかを選ばなくてはならないなら、
①売春婦(買い手の問題はさておき)②泥棒 ③乞食
・・・が潔いと思うノラ編集者。
人にすがって物貰いって輩とは、どうも趣味があわない。
道端の乞食には、冷たかろうがなんだろうが、ついぞ恵んだことがない。

なのに、熱で弱っていたせいか、寄る年波か、
悲しい犬男を追い払おうとするデリの兄ちゃんを遮り、
かき卵汁とチャーハンを、「ぷりーず」と差し出した。
こんなの初めて。
これで神様も風邪を治してくれる?見返り期待し、いつも親切?!

・・・すると悲しい犬男。しげしげと包みを見ながらたずねた。
「コレハ 何ですか?」
「エッグドロップスープと、フライドライスです」

ノラ編集者がそう答えたとたん、なんと犬男、包みを突き返すではないか。
「???」
遠慮かと首をかしげていると、悲しい犬男は手を突き出した。
「ワタシとコドモは セサミチキンが食べたいのでアル。肉がいいのでアル。
つきましては7ドルください」
「・・・」

唖然としていると、工事人らしき黒人二人連れのデブのほうが、
「ほらよ」と10ドル札を渡した。
悲しい犬男は目を輝かせ、★セサミチキン(7・5ドル)を注文
「持ち帰り?」とデリ兄ちゃんが聞くと「ここで食べマス」と即答。
・・・あのう、おなかを空かせた子供は・・・?

知人は、NY乞食に小銭を渡そうと財布を開き、大きいお札しかなかった際、
「あっ、大丈夫ですよ、おつりあります♪」
と言われたそうだ。

清く貧しく物悲しくより、こんなちゃっかり乞食たちのほうが、心温まる(?)
・・・かどうかは別として、少なくとも、風邪には効くようである。
sake
日本一フェロモン含有量の多い翻訳家・Oさんから、
「ゲイの友だちとか言ってないでフツーの男も探すように」という指令メールが届く。

1970年代のコート(実家の隣のおばさんが着ていたもの)、
ジーンズ&色気のかけらもない長靴の如きブーツ
(★SOHOのCAMPERで購入。230ドル)
というトホホないでたちで、マンハッタンを歩くノラ編集者。
ロマンスへの道は、厳しく険しい。

だが、その日、バッグの中に忍ばせていたのは超大胆なビキニ。
パリで購入したこげ茶、ほとんど紐みたいな代物。
必要最小限のところしか隠れないし、いわゆる「カップ」
(スポンジのようなもの)もついていないので、
A)若い、B)ナイスバディ、の人しか似合わないと思われる。

どちらにも当てはまらないばかりか、スクール水着さえ似合わない体型で、
恐れ多くもそんなものを所持しているのは「海外サウナ対策」。
ヨーロッパはそうでもないけれど、NYのスパはユニセックスを
謳っているところ多数。
カップルでいらっしゃいませ~、というわけで水着着用が基本なのだ。
「風呂に行ったら全裸になりたい・・・」
というニッポン人たる欲求を満たすために、恥を忍んで、
限りなくハダカに近い水着を纏っているのである。

ノラ編集者のお気に入りスパはコリアタウンにある
★http://www.juvenexspa.com/
ホットタブはホットではないが(ぬるい)、サウナもあるし小奇麗。
韓国垢すりを東ヨーロッパ出身の女性にしてもらうって、
ヘンな感じ・・・。

・・・とはいえ、酒毒にまみれた身体を、赤ん坊か本マグロみたいに
洗ってもらい、シャンプーまでしてもらうと生き返る。
スパを出て、気分よくコリアタウンを歩いていると、
道の反対側から、誰かがわたしを呼んでいる。
「○○子~!!!」

大声の主は「英語上級者のための作文教室」というワークショップで
一緒になったことがある、韓国男子サンヒョク(仮名)。
某韓国企業のNY支社勤務。

タクシーのクラクション鳴らされまくりで道を横断してくると、
いきなりガシッとノラ編集者の肩をつかむサンヒョク。
「○○子~。なんでそんなに寂しそうに歩いてるんだよ!?」
・・・寂しそうなのは、化粧がすべて剥がれてすっぴんだからです。
「もう夜でしょう、ゴハンは食べたの?」
・・・夕飯はいつもアルコールなんです。

それじゃあ、と言って立ち去ろうとすると、
サンヒョクは更に4センチくらい近づき、
「ダメじゃないか~!寒いのに、前をあけたまま歩いちゃ風邪引くだろ」
と言いつつ、ノラ編集者のコートのボタンを留めはじめた。
「ボクも食事はまだだから、さ、一緒に食べようよ」
あのう、あなたとわたし、会うのは今日が三回目・・・。

日本の若い留学生の女の子たちがよく言っているのが、
「コリアンボーイに要注意」。
韓国なまりのせいかイヤに熱く聞こえる英語で、
気障なことをガンガン喋り、挨拶代わりにぎゅっと腕を握り、
臆することなく断っても断っても誘ってくる(そうだ)。
ちゃっかりフタマタ&ミマタもこなし、別れると言うとおいおい泣く(らしい)。

・・・残念ながら、若くもなく留学生でもないノラ編集者。
この機会に実態を調査するため、サンヒョクと一緒にコリアンレストランへ。

「辛い?」
「辛い」
「おいしい?」
「おいしい」

サウナで温まった身体に韓国焼酎(竹のラベルのヤツ)&海鮮チゲ。
サンヒョクは、かいがいしく鍋奉行。低い声が、熱くやさしい。
思わず目を閉じて、しみじみ思う。
「いいなあ~コリアンボーイ・・・」

できることなら、このまま目を閉じていたい・・・。
サンヒョクの、金正男に似た顔を見ずに、もう少し浸っていたいから・・・。

蟹をほじくるために目を開ける。
若い娘には戻れないし、『冬ソナ』世代に突入するのは、
ちょっぴり早いと思うノラ編集者であった。
sora
このところのNYは暖かで、
夕闇のセントラル・パークを散歩できるほど。
ヘンリ・ベンテルでプッチのスカーフを
買うという罠(?)を逃れたので、
友人に教えてもらったアロマ化粧品、
★デクレオールのバーム(63ドル)を購入。

空気の乾燥がすさまじいのと、
レジデンスで日々、オンナのなれの果て
・・・というばあさん集団を目にしているので、
遅まきながらアンチ・エイジングに励もう、
というわけだ。

ばあさん集団といえども当然、一様ではない。
多少不自由ながら、マニキュアを欠かさないインゲ。
決してマグカップを使わず、スミレ柄のポットで
きちんと淹れた紅茶を、お揃いの柄のカップ&
ソーサーで楽しむリンダ。
かと思えば日がな一日、入口のベンチでぼりぼりスナック菓子を食べながら、
行き交う人を漫然と眺めている鯨デブばあさんもいる。

だがミリーは、どんなばあさんとも違う。
白髪のボブの前髪に、ちょこんと留めた蝶々のピン。
薄いちいさな身体を、谷内六郎が描く少女みたいなワンピースに
包んでいる。
小学生のように華奢な彼女は、いつでも憤怒の塊だ。
「今日は寒い!寒いよっ!何で寒いんだよう!説明しろ!」
「なんでエレベーターはいろんな階に止まるんだ!
なぜ皆、同じ階で降りない!説明しろ!」

・・・今は冬だし、ここは17階建てで、入居者も多いしね。
たまに手伝いに来るボランティアの人さえ、もはや答えることはない。

そんなミリーとエレベーターに乗り合わせたノラ編集者。
「オマエの持っているバッグ、どこで買ったの?」
突然、まともなことを尋ねてくるミリー。
「トーキョーです」
おとなしく答えるノラ編集者。
「どこの店だえ?」
「イセタンの、マーク・ジェイコブズです」
いきなり導火線に火がついた。
「そんな店、ワタシは知らない!嘘つき!オマエは嘘をついている!なぜ嘘をつく!」
…嘘と言われても。

エレベーターを降りて受付に行き、届いていたゲラを受け取る。
ミリーは背後から、仁王立ちで睨みつけている。
無視してそのまま読書室に向かうと、ミリーは野犬のようにひたひたと付いてくる。
赤字を入れはじめた机の傍らに立ち、鬼教師のように監督している。

縦書きの日本語で赤字を入れている光景は、不思議な感じがするらしく、
NYC図書館やスタバで仕事をしていると、たまに見知らぬ人に
「何をしているの?」と聞かれる。
拙い英語で説明するのだが、ミリーには殊更、不思議に映るのかもしれない。

ミリーはしばらく眺めていたが、スーパーのビニール袋からノートを取り出した。
ノートは2歳児が描いた絵のような、黒いのたくり書きで埋め尽くされている。
「これは、ワタシの友達や家族の連絡先が書いてある。
だから毎日、これを見て電話をしているのに、繋がらない。
オマエの書く字と同じだから、オマエには読めるでしょう?
ねえ、ビリーの番号を見つけてよ」

ミリーはノートをめくっては、わたしに見せる。
どのページも、びっしり黒い。
そういえば、ミリーは毎日、入口脇の公衆電話に向かって、なにやら毒づいていた。
今もっている分厚いノートを手に、懸命にダイヤルしては怒っていた。

「さあ、読んでよ。お願いだから」
ミリーの薄い青の目が、ひたとわたしを見つめている。
気違いミリーが、プリーズをつけてまで掛けたい電話。

「どんな悪筆の字も判読できる!」と豪語していたノラ編集者、
かつては達筆すぎる著者の赤字に首を捻る同僚を喜んで手伝ったものだけれど。
ミリーの探している番号も、見つけられたら良かったな。
hotel
年末年始、NYに来る人の最大の問題は、
寒さでもなく円高でもない・・・。
ホテルの高さ!

200ドル代が取れれば奇跡だが、
税金だのサービス料だので
それでも日本円で3万~4万。
大晦日なんて、どこもかしこも最低500ドル代。

お客さまをお泊めするのは
不可能というくらいレジデンスは狭いので、
逆にお客さまのホテルにちゃっかり
泊めてもらっていたノラ編集者。
★ワシントン・スクエアホテル(一泊250ドル~)

じつは、都内に住んでいても、
家が散らかりすぎてイヤになると
掃除を放棄して都心のホテルに泊まる・・・
という不埒な生活をしていたほど、ホテル好きなのだ。
誰かのベッドが空いているのなら、便乗しない法はない。

広いバスタブ、ふわふわベッド、洒落たインテリア。
ミニバーにはハードリカー、ベッドサイドにはワイン、
クローゼットにはプッチのドレスとバスローブ。

これはもう、素敵なレストランで食事をし、
軽くカクテルでも飲んで
「あとはお部屋で・・・♪」
という展開になることを、夢見ていたのだが。

朝、起きていきなり部屋で缶ビール(←朝食)、
ブルックリンでタイ料理がまずいと言いつつ二人で
ブルックリンラガー4杯、そのあとワインを1本あけ(←以上昼食)、
夜は夜で中華を食べつつワイン2本あけ、さらにカクテルもガブ呑み・・・
という生活を数日続けたため、
終盤戦はだんだん、
「洒落たレストラン?かったるいし~」というモードに。

結局、最終日は汚いジーンズ&中央線の
古本屋のおじさんみたいな帽子姿で、
近所の高校生が食事に来るようなピザとステーキの
チェーン店へ。
例によって食事はろくに頼まず、カクテルまずいといいつつ各自5杯。
(日本のカクテルの2倍の量です)
生ビールカウント不可能。〆にハードリカー。

お店の姉さんの白い目に送り出され、
べろべろになってホテルにたどり着くと、
ベックス(瓶ビール)が1本。

「なんぼなんでも、これ以上呑んだら壊れちゃいます・・・」
状態の二人であったし、
だいたい、このホテルには栓抜きがない。
だからこそ、残っていたベックス。
あきらめて、倒れるように眠ったのであるが・・・。

翌朝。
すっきりと飲み干された空き瓶が、朝日を浴びている。
繰り返すが、栓抜きはない。

いったい、どちらが呑んだのか?
そしてどうやって栓をあけたのか?
まさか、歯・・・。

エレガントに住むには、レジデンスがボロすぎる、と
さんざんぼやいていたノラ編集者であるが、
問題はロケーションになかったことが判明。

判明、と言うよりむしろ、再確認だが。
Sea
・・・というわけでNYも2006年が始まった。

とても静かなニュー・イヤー。
アンチ・アニバーサリー主義に相応しく、
新年に向けて買ったものは、
MOMAの2006年手帳(★10ドルくらい)のみ。

「あけましておめでとうございます」
もない朝である。

ムハンマドのコーヒー屋台はお休みなので、
スタバでコーヒーを買おうと階下に降りると、
顔見知りのジェーンがいた。

この人は40代と思しき黒人女性なのだけれど、
なぜか韓国大河ドラマ
『宮廷女官・チャングムの誓い』に出てくる
あざとい敵役、チェ・サングンを髣髴とさせる。

チェ・サングンのように権力を得るためには手段を選ばない自己顕示欲の塊、
というわけではなく、なんとなくドスが効いているところと、
女性にしてはぱきぱきして、決してひとと群れない感じが共通しているのだ。
(・・・って、わかんない方はDVD見てください)
挨拶はするけれど、黒人には珍しく、いつもさらっとしている。

そのクールなジェーンなのだが、今朝はノラ編集者を見たとたん、
「Happy New Year!」と大きく腕を広げてハグ。
「アナタにいいことが一杯ありますように、マイ・ガール」

意外にもやわらかくて、洗濯したてのシーツみたいな匂いのする
ジェーンの腕に抱かれていると、
なんとなく、こっちもやわらかい気持ちがひろがっていく。

マイ・ガールって歳じゃない、いい年だけど、
今年もいい年になりますように、と思いつつハグを返した。

あれ?アンチ・アニバーサリー主義は・・・?
まあ、酒飲みの主義なんて、そんなもので。