oomosoka
NYはただいま、31日の朝。

日本へ帰るお客さんを乗せたJFK行きのタクシーを見送ったとたん、
わんわん雪が降って、ぱたりとやんだ。

デリのおじちゃんは、「Have a beautiful day&Happy Holiday」と
お客さんに挨拶してる。
スタバの兄ちゃんがイタリア人観光客の女の子に、
すごーく親切&すごーくゆっくりな英語で
「タイムズスクエアのカウントダウンなんて、つまんないよ~だからさ~♪」
と微妙にナンパめいて話しかけているが、
なぜかまったく通じず、しょげている。

イタリア娘と来た日には、静かなレストランでケータイ片手に写真を撮り、
(写メールでなく、ケータイで話しながらデジカメ撮ってる)
零下でも下着みたいなぺらぺらワンピース姿で呵呵大笑し、
まったく、世界最強の観光客だ。

日本からのお客さんが来ていたクリスマスから今日まで、
ノラ編集者とて人の子、観光っぽいこともしてみたけれど、
考えてみたらこの三ヶ月、案内できるほどNYを回っていないことに思い当たる。
エンパイア・ステートも昇ってないし、スタテン島も上陸していないし、
センチュリー21で買い物もしていなければ、グラウンド・ゼロも見ていない。

そう考えれば写真にしても、ブログ用にケータイで撮っているのみ。
(だから雪が写らない・・・)
自分の顔など、写真に残して見るまでもない。
料理は今この瞬間、食べれば満足だ。

だいたい残しておくべき過去なんて、心のなかに溜まるぶんですら、
十分すぎはしないだろうか?

振り返る過去もなければ、来年の目標も抱負もなし。

そして考えてみれば、家族や友達、彼氏と過ごすでもなし、
知らないおやじ(?)とすら一緒でない、
たった一人の外国の大晦日&お正月は、この歳にして初体験。

まあ、あらゆる初体験が済んでしまっている歳でもあるし、
去年の今頃は想像だにしていなかったこの状況も、これまた一興。
とことん途方に暮れてみようか・・・。

・・・などと「堕ちていくわたし」に朝から浸っていると、ケータイが鳴る。

「呑みすぎで蕎麦すら食う気しないから、蕎麦焼酎呑んでたんだけど、
みのもんたを一瞬見たら、ブランデー呑みたくなっちゃってさー。
いまから呑めるか売ってる店、新宿でどっか知らない?」

なぜ、「あけましておめでとう」でなくその質問を・・・。

なのにつられて、ブランデーが呑みたくなるノラ編集者。
それどころか、みのもんたの顔を思い浮かべていたら、
八角を効かせたチャーシューが食べたくなってくる始末。

今は朝11時。
雪がやんだNYは底冷えのする曇り。
まあ、そんな大晦日も、これまたよしで。

かえる
日本はもうクリスマス・イブだろうけれど、
NYはまだ23日。
ストも無事解除になり、
クリスマス・イブイブである。

NYのクリスマスはお正月みたいなもの。
結構、「実家に帰ります」と言うヒトが多い。
若い娘さんは、デートするのであろうか?
ノラ編集者は・・・まあ、若くないので。

「そんなに寂しいなら、明日はボクと映画でも行かない?
ほら、ボクってユダヤ人だから、クリスマス関係ないし」
誘ってくださったデイビッドくん(仮名)。
ありがたいけど、わたし、別に寂しくないから。
アンチ・アニバーサリー主義だし!

・・・だが、正直に告白すると、
キミの体重がわたしの3倍でなく、せめて2倍で、
キミの酒量がわたしの4分の1じゃなく、せめて半分で、
見に行こうという映画がキングコングじゃなくカサノバなら、
たぶん断らなかったであろう。

デイビッドと別れ、バーンズ&ノーブルに行く。
自己啓発書の棚に飯の種になりそうな本があったので、ちょっとだけ
座り読み。

すると、やはり座り読みしていた若い男が話しかけてきた。
「その本、いろんな依存症についてでしょ」
「ハイ」
「ボクも読んだよ・・・。問題を抱えてる人間には辛いシーズンだよね」
「・・・・」
「ねえ、時間あるなら場所変えて話し合わない?」

これはシゴトだし、わたしは問題を放置しておくのがスキだから。
アンチ・アニバーサリー主義だし!

・・・だが、正直に告白すると、
その男が自己啓発書でなくてジェームズ・エルロイかなんか読んでいて、
ヤンキースの帽子にクリスマス柄のネクタイという素っ頓狂な格好でなく、
ごくごくフツーの服であれば、
その男が顔も身体つきもホワイトアスパラガスの缶詰みたいじゃなく、
ントニオ・バンデラスを10歳若くしたような佇まいであれば、
お互いの問題について深く語り合うのもやぶさかではなかったであろう。
(だったら、バーンズ&ノーブルには来なさそう&わたしには目もくれなさそうだけど)

こうして、望むと望まざるとによらず、アンチ・アニバーサリー主義は
守られていくのか・・・?





すと
写真は、ニュージャージーの住宅街でもアイオワでもない。
マンハッタンのマディソン・アベニュー、12月21日午後3時。
シャネルにブルガリ、バーニーズNY…etc.と、
クリスマスの買い物狂想曲に巻き込まれているはずが、
一般車両通行禁止。

NYは、25年ぶりの地下鉄・バスの全面ストライキ
3日目に突入しようとしている。

レジデンスのお掃除おばさんは、
「クイーンズから近所の人の車で2時間かけて来たわ」と
ぼやいているし、
ハーレムからミッドタウンまで1時間かけて徒歩出勤した
という人も。

こーゆー時こそ、ノラの醍醐味を味わうべく、
自室で隠れワインでも楽しんでいればよさそうなものである。
しかし街へ出るノラ編集者。
無理やりタクシーを拾う。

何故かと言えば、美容院に行くため。
渡米してから3ヶ月も放置していた髪を、なんでまた身動き取れない日に、
30ブロックも離れたアップタウンの美容院まで切りに行くのか?
予約したのは先週だが、キャンセルの電話一本ですむことなのに。
答えは一つ、酔狂だからである。

タクシーは急遽メーターを廃止し、★1人10ドルで同じ方向の人を
拾っていく相乗りシステムになっていた。

当然ながら渋滞しまくりで、クラクションが耳をつんざく。
自転車、徒歩、ローラースケートまで登場し、
観光客用のヴェトナムのシクロみたいな乗り物がサラリーマンを乗せている。

「わざわざこんな日に!って、美容院も大サービス?
すくなくとも、ガラガラでゆったりできるだろう・・・」

ところが、キャサリン・ゼタ・ジョーンズ御用達という
アッパーイーストの美容院John Friea Salonは、フツーに混んでいる。
巨大エルメスをドカッと置いたニセ金髪マダムが、
「あら~♪ストなんて知らなかったわ。ウチはここから徒歩5分だし~。
遠くに行くときはいつもリムジンだから。ほほほ」
なんて高笑いしながら、カットしてもらっている。

・・・すみません、高級美容院に公共交通機関を使って来ようなんて庶民は
わたしだけでした・・・。

気を取り直し、まずは更衣室で上だけ、ぺらぺらガウンに着替える。
カラーの担当者、カットの担当者それぞれが、
施術前に要望を聞いたりアドバイスしたりしてくれる。
サービスの飲み物はカプチーノ、コーヒー、アイスティ、ペリエなど。
日本みたいなマッサージ・サービスはない(残念)。

キムというカラー担当者(ブルックリン橋を歩いて3時間かけて出勤)が、
「目の色に対して髪が赤すぎます。ダーク・チョコレートにしなさい」
と言う。
へいへい、ぷりーず、と従う。

「普段はどういうスタイリングをしてますか?ご自分でブローを?」
スティーブンでなくステファンだと名乗るカット担当が聞く。
「えあー」
即答するノラ編集者。
「はっ?スミマセン、おっしゃる意味がわかりかねますが・・・」
「エアーです、エアー。空気が乾燥しているし、ドライヤー使うのが
面倒くさいんで、れっといっとびー」
「・・・・・・」

有名美容院好きの割に、髪型に興味がないノラ編集者。
美容師がショートにしろと言えばするし、伸ばせと言えば伸ばす。
小学生のとき読んだ『山椒太夫』に
「指さえ切らなければ、髪くらい切ってもOK」
というくだりがあったため?
ちなみに、東京でも女優御用達美容院のいくつかに行っていたが、
顔を合わせたのは泉ピン子だけだった・・・。

結局、ちょっと洒落たゲゲゲの奇太郎みたいな髪型が完成。
★約240ドル。(シャンプー、ブロー、カラー、カット)

金持ちおばさんは50ドルもチップを渡していたが、
自分でブローして安くあげてる若い娘もいる。
ノラだし外人だし、10ドルぽっち、受付にあるお年玉袋みたいな
チップ入れに入れて店を出た。

さくっとバーニーズを眺め、乗り合いタクシーで帰途につく。
先客の女性が「さっきブルームバーグ市長、見ちゃった」と言う。
「スト、終わらせるって?俺はこのままでいいっすけど」
運転手が聞く。
「市長、違法でセルフィッシュな振る舞いだとコメントしたそーです」
美容院で聞いたテレビ情報を伝えるノラ編集者。
「終わらせないんじゃないの~?ブルームバーグ、金持ちだし」
あっさり言う女性。

一同、うなずく・・・ごもっとも。

森 鴎外
阿部一族・山椒太夫他8編
キリスト
土曜日、二日酔いがあまりに酷いので散歩に出る。
ロウワーイーストの古着屋エディス&ダーハでヴィンテージ・プッチ発見。
60年代のもので、すとんとしたシルクジャージ。
★グレーとピンクの細かいパターン。650ドル。

値段もデザインもストライク圏内。
しかし、なぜだか、
「この服は、もっと背が高くて身体がバーンとしてる人に着られたほうが幸せだ・・・」
という気がしきりにして、購入せず。
服の心配(?)してるほど、わたしは幸せではないのだが。

人にしても服にしても、
「素敵だけど、わたしには縁がないな・・・」と思うものには、
手を出さないことにしている。
お買いもの日記のわりに情けないけど、
だから何一つ、金目のものをもっていないのかもしれない。

3rd アベニューにあるフレンチ・ローストというフランス風カフェで
キウィ・モヒート(★10ドルちょっと)一杯。
砂糖が多いのとアルコールが少ないのが気になったが、
生の刻みキウイがふんだんに入っていたので、酔いがちょうどよく消化される。

気をよくして、ボルドー赤をカラフ半分(★15ドル)
隣の席のフランス男二人組に話しかけられたので、
知っている限りのフランス語を並べる。(←すでに酔っている)
観光客らしく見所を聞かれるが、わたしは観光に興味がないので、と
愛想のないことを言う。
フランスに20回近く行っているのに、どうして注文と挨拶以外、
覚えられないんだろう・・・。
でも、フランス男がおごってくれたからいいか。

バーに行くと言うフランス男と別れ、韓国人爺さんの店で
ボジョレーヌーボーを2本(★1本8ドル弱)、
スタバ印のコーヒーリキュール(アルコール度数15度。★23ドル)購入。

部屋に帰り、近くのイタリア人がやっているデリで買った
苺とベリー類のパック(★5ドル)をつまみにワインを飲み始める。

気づくと日曜朝。10時。
つけっぱなしのテレビでは、子供向けのアニメがスペイン語でやっている。
電話で目が覚める。少し話す。
メールがいくつか入っている。面倒なので無視。

昨日の赤ワインが、グラスに波波一杯、注いだままになっているのに気づく。
ベッドの中から手を伸ばして起き抜けの一杯。
夢の続きみたいな味がする。
ちびちびやっていたら、いつのまにかまた、ボトル一本あけてしまった・・・。

先週、イタリアンを食べた某ユダヤ人が
「キミは小鳥みたいに小食なのに、どうしてそんなに飲む?」と
呆れていたけれど、うーん、なんでだろう・・・。
しかし、この土日で苺とベリーしか食べてないからな・・・。

二つぶ残っていたラズベリーとブルーベリーを食べる。
ダミアの「暗い日曜日」が聴きたくなる。

今日もいい天気。
さあ、これから何を呑みに行こうか・・・。

「この歳になってアメリカに行って、
新人になるとは思わなかった・・・」

メモワール・オブ・ゲイシャに出演した
桃井かおりは、こうコメントしたとか。

某社の美人社長から、
「このニュースを見ていたらノラ編集者のことを思い出しました」
とメールをいただく。

桃井かおりと違って、ただ、NYにいるだけだけれど、
タイムズスクエアの映画館に、見に行ってきた。
★大人10ドルちょっと。

六本木なんかの巨大シネコンみたいな映画館だが、
生ビールはもちろん、缶ビールも瓶ビールも売っていない。
ちびワインもワンカップ大関もない。

売っていないのはいいが、ちょっと売ってるかどうか聞いただけなのに、
従業員同士で、
「おい、彼女ビールがほしいんだって!ビールだよビール!」と
大声で言わないでほしい・・・。

映画はまあ、綺麗なだけでビバノンノンな、予想通りの出来。
超くだらないギャグ(舞妓のポックリをはじめて履いた主人公が転ぶ)に
爆笑が巻き起こるアメリカ人のノリについていくには、
やっぱりビールが必要だ・・・。

というわけで(?)レジデンスに帰ってから、隠れビール。
寒くなって誰も近寄らない屋上のオープンテラスで、
暗闇に乗じて、凍えながら飲むビールは最高♪

ここでよく顔を合わせるのが、貴重な飲み仲間、ポーランド人のバドゥナ。
ワルシャワで働く30代の新聞記者である彼女は、お酒とSUSHIが大好き。
なんたって二合トックリが15ドルもする店で、二人で一升飲んだ仲だ。
ポーランドに帰国することになった彼女のお別れ会も自然、
ロウワーイーストで痛飲バージョンに。

「クリスマスに家に帰って、ダーリンに会うの楽しみ?」
わたしが聞く。
「ダーリンよりも、今は姑に預けてある子供が心配。電話したら、
バレエ教室さぼらせたみたいでムカつくし。実家の両親に預ければよかった・・・
でも、姑には高いお土産を買っといたわ」
バドゥナがお母さん&ヨメの顔になって言う。
どこの国も、同じようなものなのか。

酔いが手伝って、いつもよりテンションが高いバドゥナがぱっと
手をかざした。
「みてみて。韓国人のスパで、最後に綺麗にマニュキュアしてきたの。
帰国したら、それどころじゃないもの。
でも、30代で子供とダンナをおいて一人で一ヶ月NYに来るって、
わたしには凄く思い切った冒険だったの。
もう冒険が終わると思うと、ちょっとさみしい・・・」

バドゥナがワインを飲む。
ちょっとしんみりする。
わたしもワインを飲む。

「冒険か・・・」わたしはつぶやき、「冒険だよね」と言う。
「でもバドゥナ、まだまだちがう冒険ができるよ」
酒のせいか英語だからか、柄にもなく、クサイ台詞を吐く。

「うん・・・」バドゥナがつぶやき、カウンターのスツールから立ち上がって、
わたしをぱっとハグした。
「ありがと。そうだよね、わたしたち、まだまだ冒険できるね!」
「・・・・」
なんかクサいが、ちょっと感動しているわたし。

するとバドゥナが耳元でささやいた。
「でもアナタはお酒以外の冒険をしたほうがいいよ」
「・・・」

さあ、ワインおかわり!